由真ちゃんと○○○○さんと

 

 

 

今日も一日が終わり、俺は下駄箱へと向かった。するとそこには見知った人物が奇妙な行動をとっていた。

「きょろきょろ、きょろきょろ」

「……何きょろきょろ言ってんだ由真?」

俺は自分できょろきょろ言いながら辺りを見渡している由真に声を掛けた。

……!!な、なんだ貴明か。驚かさないでよ」

胸に手を当て息を吐く。

「いや、別に驚かすつもりはないんだけどな。で、なにやってるんだ?」

「追ってが来ていないかどうかの確認よ」

「追って?またじいさんか?」

一度は納得した由真のじいさんだが、まだ孫をダニエルにするという望みは捨てきれていないらしい。

「当たらずとも遠からずってところかしら」

「はぁ?訳がわかんねぇ」

「ふん、まぁしょうがないわね。説明してあげるわ」

腰に手を当てて胸を張る。いや、そこは威張るところじゃないぞ?

「この前うちに新しいメイドロボがきたのよ」

「なんだ、新しく買ったのか。金持ちは違うな」

ちょっと皮肉を込める。メイドロボは車より高いのだ。庶民がほいほい買えるものではない。

「ちがうわよ。親戚から稼動テストを頼まれたの。なんでも新型らしいから」

「新型メイドロボのテスト?ってお前の親戚なにやってる人なんだ?」

「来栖川でメイドロボの開発をしているわ。結構偉いらしいわね」

そうだろうな。テストを頼むなんて責任者クラスの人にしか出来ないだろう。

「で、その新型のメイドロボとお前の奇妙な行動と何が関係してるんだ?」

「奇妙っていうな!」

「それともなかったら奇怪だな。自分できょろきょろ言ってる奴なんてまずいない」

「あれはそれだけ警戒してたってことよ!」

こちらに身を乗り出してくる。ふぅ、これじゃあ話しが進まないな。

「わかったわかった。話を続けてくれ」

「あんたが変な事言うから進まなくなったんでしょ!」

変か?俺は至極当然な事を言っただけなんだが。

「まぁいいわ、続けるわよ。新型メイドロボがきたこと自体には問題はないの。問題はそのメイドロボの役割よ」

「役割って言ってもメイドロボだろ?家事とかするのが普通じゃねえのか?」

なんせ『メイド』ロボなんだからな。

「ううん、違うの。『あいつ』が来た目的はあたしにダニエルの教育をすることなのよ!

「ええー!なんでだよ?その話しにはケリが着いたんじゃなかったのか?」

じいさんはダニエルを強制するのはもうやめた筈だ。

「おじいちゃんが言うには、将来私の気が変わった時のための手助け、らしいわ。ダニエルってすぐには成れないらしいから。」

「つまりお前が将来ダニエルに成りたいと思ったときの保険ってとこか」

ダニエルにするのではなく、ダニエルに必要な教育をする『だけ』である。それでその後、どうするのかは由真が決めるってことらしい。

「ま、そういうことよ。その保険のためにおじいちゃんが『あいつ』のテストを引き受けたってわけ」

ああ、だから当たらずとも遠からずってわけか。言うならばそのメイドロボはじいさんの刺客だ。そしてここで俺が取るべき行動は一つ。

「そうか、じゃ、頑張ってくれ」

厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだ。俺は由真の脇をすり抜けて帰ろうとした。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

慌てて由真が俺の腕を掴んでくる。

「なんだよ、教育『だけ』なんだろ?なら、問題無しだ」

「そうだけど!でも、一日10時間勉強とか、早朝マラソンとかさせられるのよ!今日もこの後何かやらされるにちがいないわ!!」

むぅ、それはきついかも知れない。でも俺の事じゃないし。

「ま、運が悪かったと思って諦めるんだな。いいじゃないか頭も体も鍛えられて」

「この薄情者!!」

「薄情者っつたってなぁ。俺にできる事無いし」

これは由真とそのメイドロボとの問題だ。

「そりゃそうだけど……。あたしだけ苦労するのは許せない!

こいつ、相変わらず無茶を言う。

「んなこと言ってもなー。その稼動テストが終わるまでの我慢だろ?」

「嫌よ!我慢できないわ。あんたはあいつの『教育』を受けてないからそんなことが言えるのよ!」

熱弁する由真。そんなにキツイのだろうか?

「あいつはきっと鬼よ!悪魔よ!自分の目的の為には手段を選ばないし、逃げようとしたら首根っこ引きずられて戻されたわ。メイドロボの癖になんて乱暴ものなのかしら!」

「……だれが、乱暴ですか?」

急に後ろから抑揚の無い声がした。

「そんなの決まってるじゃない!ミルフ…ってああ!!

由真が俺の後ろを指差し、声を上げた。

「お嬢様が何時までたっても校門にいらっしゃらないので向かえに参りました。もう、下校時刻の筈ですが?」

「ちょっとあんた、なんで校門なんかで待ってるのよ!」

「無論お嬢様の逃亡防止です」

しれっと言うメイドロボ。っつーか人を挟んで会話をしないで欲しい。俺まだそのメイドロボの顔すらみてないし。

「お嬢様が放っておくと真っ直ぐご自宅に戻らないことは予測済みです。さあ、帰りましょう。この後も予定が詰っております」

「予定ってなによ!」

「まぁ、色々と」

「色々ってなんだー!今日は何をやらせる気なのよ?!」

「始める前から、お嬢様のやる気を損なうような発言はしたくありませんので」

つまり、言っちゃうと由真が逃げ出すような事をやらせるらしい。それにしてもすごいなこのメイドロボ。まるで人間みたいだ。顔見てねえけど。

「ちなみに逃亡なさるおつもりなら、いつものように引きずって帰りますので」

「ほら、聞いたでしょ?!メイドロボの風上にも置けない奴だわ」

いや、メイドロボの風上ってなんだよ?

「当たり前です。私は他のメイドロボとは一線を駕しておりますので。己が良いと思う行動をとる事が出来るのです」

おいおい、それじゃあ本当に人間じゃねえか。ん、でも俺の知り合いにもそんな人がいたな。

「お嬢さま、もう無駄な時間は終わりです。帰りましょう」

「い、や、よ!!」

「仕方ありませんね」

そういうとメイドロボは素早く由真の後ろに回りこみ襟首を掴む。由真と身長が近いため、顔は未だに見えない。

「ちょ、ちょっと何するのよ!」

「言ったでしょう?引きずって帰りますって」

「もうちょっと説得するとか、普通するでしょ!」

「効率重視でまいります」

「だからあんたは乱暴者なのよー!!」

「私は気にしてませんので」

そう言って由真を引きずって連れて行く。俺なんか置いてけぼりだ。

「あ、そうでした。お嬢様の御学友の方。お嬢様はこれから帰宅なさるので、御用があればまた明日以降にお願い致します」

そう言い、メイドロボがこちらを向いたため、ようやく顔を拝むことができた。あれ?髪の長さや色は違うけどなんかイルファさんに似ているような気がする。もっともこっちの方がクールって印象を受けるけど。

「……!!」

それにしてもこの人胸がでかいな。はっ!いかんいかん。つい、見入ってしまった。

「ちょっと、貴明の顔を見つめちゃってどうしたのよ?」

え!お、俺は見つめてないぞ?」

もしや、胸を見ていたのがばれたのか?

「あんたじゃなくて、こいつのことよ」

言われてみればこの人さっきからじっと俺のことを見ている

「あの、俺になにか?」

「……貴明様とおっしゃるのですか?」

「はぁ、そうですけど」

「!」

メイドロボは駆け寄り、俺に抱きついてきた。……なぜデスカ?

「あー!ちょっとあんた、なにしてるのよ!」

首を離され自由になった由真がこちらを指差す。

「はっ!」

離れるメイドロボ。……やっぱり胸はでかかったな。

「すいません、とんだ失態を。感情を抑えきれませんでした」

「感情を抑えきれなかった、ってあんた貴明のことしってるの?」

「はい」

改めてこちらを向く。

「この姿で会うのは初めてですね。HMX-17bミルファです。お久ぶりです。貴明様」

そう言って頭を下げるミルファ。え、ミルファって確か珊瑚ちゃんの…ってことは!

「おまえ、くま吉か?!」

「確か貴明さまにはそう呼ばれてましたね」

微笑するミルファ。

「うわ、こいつ笑った!」

「失礼ですね、お嬢様」

由真を冷ややかな目でみる。

「だって、私あんたが笑った所って見た記憶がないんだけど?」

「そうでしたっけ?」

「うん、ってなんであんた達が知り合いなのよ!」

ようやく最初の質問に戻ったか。

「ミルファを生み出したのは珊瑚ちゃんなんだ」

「え、珊瑚ちゃんってあのぽややーんってしてたあの子のこと?」

ぽややーんって、やっぱり由真にもそう見えたか。

「そう、そのぽややーん」

「えーーーー!!!」

驚くのも無理はない。俺も最初知ったときは凄く驚いたもんな。

「ホントにホント?」

「本当だ」

「あたしを騙そうとしてないわよね?」

「珊瑚様はその道ではとても有名な方なのです」

少し自慢げに言う。

「うっわー。マジなんだ。人は見かけによらないって本当よねー」

それは俺も同意見。

「私も少し驚きました。まさかお嬢様と貴明様がお知り合いだったなんて。世間は狭いですね」

「腐れ縁ってやつだよ」

「腐れ縁ですか……」

由真の方を見るミルファ。

「な、何よその目は。そ、そう腐れ縁なのよ」

「ま、私のほうもその方が都合がいいですし、そう言うことにしておきましょうか」

「ちょっと!なによその含みのある言い方。気になるじゃない!」

「いいえ、そんなつもりは。さ、もう帰りましょう」

そう言い、再び由真の襟首を掴む。

「あ、こ、こら!離しなさいよ!」

もがく由真。しかし掴んでいる力が大きく、振りほどけない。メイドロボって力があるんだよな。俺実体験ずみ。

「いいえダメです。それでは貴明様。また後日改めてお伺いします」

そうして、由真を引きずって歩き出した。しかし途中で立ち止まる。

「そういえば、一つ言い忘れていた事がありました」

「何?」

「私はこの稼動テストが終了すれば、本格的にどなたかに仕えることになります。その時には貴明様にあの時の責任を取って頂くつもりでいますので」

そう言って再び歩き出す。あの時ってあれか?クマの縫い包みだった頃のあの時のことか?

「ちょっと、貴明!あの時とか責任ってなんだ!」

引きずられながら由真が叫ぶ

「お嬢様には関係のないお話なのでお気になさらずに」

引きずりながらミルファが応える。

「気になるわよ!貴明―!説明しなさいよー!」

しかしミルファに引きずられどんどん遠のいて行くのだった。

「〜〜〜!これで勝ったと思うなよー!!!」

いや、ここでそのセリフはどうよ?

 

しばらくすると二人は完全に見えなくなった。それにしても騒々しかった。由真なんて叫びっぱなしだったしな。

「はぁ〜〜〜〜」

なんかこの先もさらに騒がしさが増すと思うと、溜息が出てしまう俺でありましたとさ。

 

 

 

あとがき

はい、由真ちゃんと○○○○さんをお送りしました。もちろん○にはいるのはミルファです。書いちゃうとオチが読めてしまうのであえてこうしました。いや、でも予想済みだって人は結構いるのかな?

それにしても出してしまいましたミルファ。公式設定がわからないので、ほぼ想像です。書くにあたり、他のサイトさんを見てまわったら元気な性格が多かったので私はクールな感じにして見ました。いかがでしょう?ちなみに元となるキャラはいます。わかる人はいないと思いますけど。

内容的に今回のネタは好き嫌いが分かれるネタですが私的には気に入っています。でもまだまだ表現力不足。頑張らないと。もっと生き生きとした由真が書きたいです。

それと今回で私の持ちネタが無くなってしまったのでみなさんの好きなキャラを募集したいです。宜しければ提示板に書いてください。もちろん常連さんもかまいません。

さて、長くなってしまいましたが、お蔭様で8000ヒットを超えることができました。これも皆様が私の駄文なんかを読んでくださるおかげです。本当にありがとうございます。まだまだ素人ですがこれからも精進していきますのでどうかよろしくおねがいします。

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