由真ちゃんと愛佳ちゃんと

 

 

 

キーンコーンカーンコーン。授業終了のチャイムがなった。

「あ〜、疲れた」

俺は机にベターっと突っ伏す。もうすぐ期末試験が始まる。普段不真面目な生徒もこの期間は真面目に授業を受けている奴が多い。

「本当だぜ。なぁ、50分ってなんでこんなに長いんだ?」

ふらふらしながら雄二がこちらにやってきた。

「そんなこと知るかよ。それにしても珍しいな。お前が授業を真面目に受けているなんて」

そう、こいつはいつもテストが近くなってですら真面目に勉強しようとしない。それどころか、俺を道ずれにしようと色々策を練ってくるようなやつだ。大抵は自滅するけどな。

「おまえ、今の俺の状況知ってるだろ?」

「ああ、たま姉か」

「そうだ!あの悪魔、俺の生活を乱すだけでは飽き足らず、とんでも無いことを言ってきやがった!」

「とんでもないこと?」

「そうだ。具体的には俺が今度のテストで赤点を取ったら……」

「とったら?」

「『切る』らしい……」

「切る?切るってなにをだよ。小遣いか?」

「わからん。ただ、凄い殺気で脅すんだ。『雄二、次のテストで赤点を取ってごらん。…切るわよ』ってな」

「それは、怖いな……。」

分からないということは、時に恐怖の対象になる。

「小遣いならまだいいが、もし『あれ』だったりしたら……」

雄二の顔が青くなる。

「心当たりがあるのか?」

「お前もあるはずだぜ。昔、二人して切られそうになっただろ?」

俺も?俺が昔たま姉に切られそうになったものといえば……。

「!!!」

「どうやら気づいたようだな」

「い、いや、でもまさかたま姉もそこまでは……」

「本当に?本当にそう言い切れるか?あいては『あの』姉貴なんだぞ?」

「……。」

俺は返す言葉がでない。未だに、たま姉がはさみを持って追いかけて来る光景を俺は鮮明に覚えているからだ。

「雄二、頑張れよ。俺にはそれしか言えない。」

「んなこと言われなくてもわかってるよ。今回は本当に死活問題だからな」

確かに男にとっては死活問題だ。

「じゃな、俺は次の授業に備えて寝るわ」

そう言って雄二は自分の席に戻っていった。背中に哀愁を感じる。

「大変だな、あいつも…」

「なにが大変なの?」

「ああ、雄二の奴がな男として……って由真!」

いつの間にか俺の後ろに由真が立っていた。

「なんだ、なにかようか?」

「ふふふ、宣戦布告をしようと思って」

「宣戦布告?」

「そうよ!この前は不覚にも遅れをとったけど、今回のテストは私が勝たせて貰うわ」

どうやら、テストの勝負を申し込みに来たらしい。本当に負けず嫌い奴だ。

「そんなの勝手にやってろ。めんどくさい」

「あら、逃げる気?」

「何?」

「まぁ仕方無いわね。あんたがこの由真ちゃん様に恐れを抱く気持ちも分からないでもないから」

小ばかにしたような顔でこちらを見てくる。てめー、また危険なネタ使いやがって。

「誰が誰を恐れてるって?」

「あら、じゃあこの勝負受ける?」

「おう、上等だ。おまえなんか打ち抜いてやる」

「その言葉、あとで後悔する事になるわよ?なんたって今回私には秘策があるんだから」

胸を張り、腰に手を当てて言う由真。

「秘策?」

「そう、秘策。教えてあげないけど。じゃ〜ね〜」

そう言って由真は自分のクラスに帰って行ってしまった。

「秘策か……」

あいつの事だ。きっと高性能なメイドロボや専属の家庭教師に勉強を教えて貰うとかそんなとこだろう。あいつの家って金持ちだからな。

「だったらこちらも一人じゃきついか……」

俺も誰かに教えて貰うか。頭のいい人といえば……

「たま姉?」

いやいや、後で何を要求されるかわからないから却下だ。

「珊瑚ちゃん……」

さすがに年下に教えを請うというのも……。

「他に勉強の出来る奴といえば……」

!いた!適任の奴が。あの人なら勉強も出来るし、人に教えるのも上手いに違いない。俺は早速協力を要請しに行くことにした。

 

「で、なんであんたがここにいるのよ?」

「それはこっちのセリフだ」

「まあまあ、由真も貴明くんも仲良く勉強しよ。ね?」

俺は図書館に来ている。そう、俺が協力を要請した相手は愛佳である。俺の要請を心良く引き受けてくれた上、早速今日から図書室で勉強を見てくれることになったのだ。でも、まさか由真も一緒にいるとは……。

「あー、もう!愛佳のバカ!これじゃあ秘策にならないじゃないのよ!」

「ええ!もしかしてまずかった?最近由真、貴明くんと仲いいし、黙ってても問題ないかな〜って思ったんだけど」

「誰と誰が仲いいのよ!」

「由真と貴明くん」

「きー!どこをどう見たらそうなるっつーの!」

「由真、顔真っ赤だよ?」

「人の話を聞けー!」

ああ、愛佳がこんなやりとりをしているなんてとても珍しい。由真とは本当いい友達なんだな。でも、周りが注目してますヨ?

「おまえら、その辺にしておけ。勉強する時間がなくなっちまう」

「あ、うん、そうだね〜。早くやらないとね」

愛佳は空いている席に向かっていった。

「ほら、二人とも、はやく〜」

「呼んでるから行こうぜ?」

「なんか勉強する前から疲れた」

さもあらん。

 

「え〜っと、由真が数学で、貴明くんが英語だよね」

「うん、それ」

「ぷぷ、あんた英語ができないの〜?」

「そういうおまえこそ、数学が出来ねえじゃねーか」

「なにをー!」

「なんだよ!」

俺たちは立って睨み合う。

「もう!喧嘩するなら教えてあげないよ!」

「うっ、それは困る。由真、一時休戦だ」

「そうね。テストが終わるまで待ってあげるわ」

「はい、よろしい〜。じゃあ、各自勉強して解らないところが出たらきいてね?」

「了解」

「わかったわ」

そして俺達は勉強を開始した。

 

カリカリカリカリ。俺達はそのあと無言で勉強し続けている。

むっ、解らないところがでてきたな。ここは自分で考えるより聞くのが得策か。

「なあ、愛佳ちょっと……」

「愛佳、解らないところがあるんだけど……」

タイミング悪く、俺と由真は同時に質問してしまった。

「おい、俺が先に質問したんだ」

「なによ、私の方が早かったわよ」

「いいや、俺の方だね」

「違うわ、わたしよ」

「俺だ!」

「私!」

いつしか俺達はまた睨みあっていた。

「ムッキー!喧嘩するなー!」

愛佳が右手を振り回す。

「だって由真が…」

「貴明が……」

「もう!子供みたいなこと言わないの。いいよ、二人一緒に見せて」

俺と由真はそれぞれの問題を愛佳に見せた。

「ふんふん。わかったよ」

早!

「貴明くんはここの助動詞の訳が間違ってるの。由真のはここの計算式ね」

さすがは委員長。的確な指摘だ。

「他にまだ解らないところある?」

「いや、俺は今の所他には……」

「私も特には……」

「それじゃあ、また開始!」

愛佳の号令によって俺達は再び勉強を始めた。

 

しばらくして、俺はまた躓いた。が、しかし……。

「すーすー」

肝心の愛佳が寝てしまったのだ。

由真の方を見ると奴も手が止まっている。

「おい、どうするよ?」

「どうするって、これじゃあ、ねェ?」

「でも、起こすっていうのも気が引けるよなぁ」

だって、凄く幸せそうに寝ているんだから。

「うん。それに今日も愛佳、急がしかったんでしょ?」

「ああ、先生や生徒に頼りにされまくりだ」

「それじゃあ疲れるわよねー」

ホント、愛佳は頑張り過ぎだと思う。前よりかちょっとマシになったけど、それでも、だ。

「俺達って負担になってたのかもな」

「そうね。安易に愛佳に頼りすぎたかもね」

「だけど、勉強会を辞めるっていったら愛佳、気にするだろうな」

「確かに。そういう娘だもんね」

「どうする?」

「どうしようか?」

俺達はう〜んと考える。

「はぁ、仕方ないか」

「なんだ、いいアイディアがあるのか?」

「気は進まないけどね」

肩をすくめて言う。

「私とあんたが教え合えばいいのよ」

「俺とお前が教え合う?」

「そ、私達ってちょうど得意科目と苦手科目が正反対だから」

ああ、確かに。

「それで、教えあって本当にわからないとこだけ愛佳に教えて貰うってわけ」

なるほど。それなら愛佳の負担も減るな。

「気が進まないけどね」

「そうも言ってられないだろう?」

「まぁ、ね。じゃあ、早速始める?」

「そうだな、そうしよう」

そうして、俺達はお互い教え合いながら勉強を進めていった。

 

「う、う〜ん」

「よう、愛佳。起きたか」

「わ!ご、ごめんなさい。私寝ちゃって」

「気にするなよ。愛佳に聞かなくちゃならない程の問題はなかったから」

「本当?でも、わからないとことか、あったでしょう?」

バツがわるそうにこっちを見上げる愛佳。

「平気よ。貴明にきいたから」

「え!貴明くんに?」

「ああ、まぁ、なんだ。教えあったほうが効率が良いってことに気づいてね」

「不本意だけどね」

「不本意だけどな」

「ふ〜ん。そう。やっぱりね…。……私も頑張らないと」

「?、愛佳はこれ以上何を頑張る必要があるんだ」

「そうよ、むしろもうちょっと手を抜いてもいいぐらいだと思うわ。」

「ううん、こっちのこと。それより、これからはこういう形で進めていくってことでいいかな」

「ああ」

「いいわよ」

「じゃあ、テストまで頑張ろう〜!」

「「おー!」」

こうして俺達の本当の勉強会が幕を開けたのだった。

 

結果

雄二は無事、赤点を取らずに済んだ。テストが終わったら物凄く憔悴しきっていたけどな。

俺も由真も愛佳との勉強会のおかげでいつもよりかなり良い結果になった。しかし勝負は……。

「これで勝ったと思うなよー!」

ま、日ごろの行いってやつですよ。由真さん。

 

 

 

あとがき

はい、由真ちゃんと愛佳ちゃんとをお送りました。いかがでしたでしょうか?雄二が久々にでてきましたがちょっと出番が多過ぎましたね。

今回、私的にはいまいち感がしてならないんですが……。特に愛佳。うまく書けなかった。やっぱりインターバルが必要かな。

次の作品は姫百合姉妹。その次はこのみを出したいと思います。seiさん、橘花さんしばしお待ちを。それからシンサーンさん、いかがでしたか?由真と愛佳を出してみたのですが。由真ちゃんシリーズはご要望があれば続けて行きたいと考えています。それにしても今回イマイチですいません。はぁ〜、不調だ。

このように、みなさんからの意見は確実に反映させていただきます。ご意見ご感想があれば提示版を設置いたしましたのでそちらにどうぞ。でも、出来の方は……。まだまだ勉強中なのでご容赦ください。

 

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