このみちゃんと雄二くんと

 

 

 

ピーンポーンっと向坂家の呼び鈴が鳴る。

「はーい、どちら様で?」

応えたのは向坂雄二。一応向坂家の長男である。

「あ、ユウくん?このみだけど……」

「なんだ、このみか。今姉貴なら留守だぜ?」

「ううん、タマお姉ちゃんじゃ無くて……」

「貴明も来てないけど」

「タカくんも違うの……」

「じゃあ、どうしたんだ?」

「……。」

黙ってしまったこのみ。

「このみ?」

「……あのね、このみ相談があるの!」

「はぁ?!」

 

とりあえず家の中で話しをしようということになり、ただいま雄二の部屋。

「で、相談ってなんだよ?そういうのは俺なんかよりよっぽど姉貴のほうが向いていると思うぜ?」

実に的確な発言である。

「ううん、タマお姉ちゃんにはちょっと……」

珍しく歯切れの悪いこのみ。

「貴明にもか。」

「うん……」

「……まぁ、このみに頼りにされるなんて滅多にないからな。いいぜ、言ってみろよ?」

「うん、ありがとう、ユウくん」

ニコッと笑いながら言う。お礼を言われて雄二は少し照れた。

「ほ、ほら、礼はいいからよ、相談したい事があるんだろ?言ってみな」

「うん。あのね、タカくんの事なんだけど……」

「貴明のこと?」

これを聞いて雄二はピンと来た。

ま、確かにそれじゃあ姉貴や貴明に話すのは無理か」

「ユウくん?」

「いや、なんでもねぇ。続けてくれ」

「最近、タカくんの周りって女の人が多いよね?」

「あー、そうだな。なんかあいつ急にモテモテになりやがって。ちくしょう!こっちにも少しまわせっつーの!!

いきなり本音を大声で暴露。さすがのこのみもひいている。

「ユ、ユウくん?」

「あ、いや、すまんすまん。遂、感情的になっちまった。クールな俺らしくねーな。続けてくれ」

誰もそんなことは思っていない。

「う、うん。それでね、タカくんその人たちと一緒にいるときが多いし……」

途切れ途切れに話している。言いたいことが上手く言えない様だ。

「タカくんと一緒にいる時間も減っちゃた気がするし……」

しかし、そこは幼馴染。雄二には言いたい事がわかった。

「あー、はいはい。つまり、もっと貴明に意識して欲しいってことだろ?」

このみは顔を赤くし、首を振る。

「そ、そうじゃなくて、なんていうか、前みたいにいられたらいいなって……」

「いや、昔みたいじゃだめだ!」

急に語調を強める雄二。

「だ、ダメ?」

「そうだ!お前の言う通り、今のあいつの周りには羨ましい事に、かわいい子が集まっている。だから今までと同じでは貴明は振り向かない!」

立ち上がり、このみに向かって力説。

「それどころか、このみから離れていき、一緒にいられなくなる可能性大だ!」

「ええ〜、そんなの嫌だよー」

ちょっと涙目になってしまった。

「心配するな、俺がなんとかしてやるよ」

このみの肩に手を置き、優しい顔で慰める。しかし、心の中は……

(ふふふ、これでこのみと貴明がくっ付けば俺にもチャンスが巡っくるってもんだ)

どうやら下心満載のご様子。

「ホント、ユウくん?」

しかし、当然このみはそんなことに気づかない。

「ああ、伊達に付き合いが長い訳じゃあないぜ?俺にまかせとけ!!」

 

そして翌日。

「あら、タカ坊。今日はこのみと一緒じゃないの?」

「うん、家に行ったら後で追いつくから先に行ってくれって言われてね。どうせ寝坊でもしたんだろ」

「ふふ、しょうがない子ね」

「まったくだよ。昔から全然変わらないんだから」

談笑する貴明と環。しかし雄二だけは含み笑いをしていた。

(くくく、笑っていられるのも今のうちだ。)

まるっきり悪役である。

 

そうこうしている内にこのみが到着。走ってきたので息が切れている。

「はー、はー、遅れてゴメンね。タマお姉ちゃん、ユウくん。それと……」

貴明のほうを見たまま止まってしまった。

「?どうした、このみ?」

「お、」

「お?」

(あー、もう焦れってー!)

「お兄ちゃん・・・」

「お兄ちゃん?!」

(よし、よく言った!!)

驚く環。真っ赤なこのみ。ガッツポーズの雄二。しかし貴明だけは首をギギギと動かし、雄二の方を見る。

「おい、雄二。これはいったいなんだ?」

「ええ!おまえしらないのか?こういうのを萌えっていうんだぜ?」

心底意外そうに言う雄二。

知るかよ!っていうかやっぱりお前の入れ知恵だったか」

「は!し、しまった」

「へぇ、それはいったいどういうことかしら雄二」

冷たい目で雄二を見る環。雄二は蛇に睨まれた蛙の状態だ。

「私のかわいいこのみにいったい何を吹き込んだのかしら?」

「い、いやこれはその、えっとなんていうか……」

「このみ、いったいどうしたんだ?」

貴明はこのみに直接聞いてみることにした。

「え、でも……」

「何かあったんだろ?それとも俺なんかには言えないことか?」

「ううん!違う!」

「じゃあ、言ってくれ。別に怒ったりなんてしないから」

少し躊躇した後、このみは口を開いた。

「……あのね」

「何?」

「最近、このみ、タカくんと一緒の時間が減っちゃったと思うの。それでどうにかしたくてユウくんに相談したら……」

「お兄ちゃんって呼んでみろって?」

「……うん。タカくん、そういうの好きだっていうから」

「お前な〜」

呆れた表情をする貴明。それを見てこのみは少し拗ねてしまった。

「だって、タカくんこの頃他の女の人と一緒にいること多いもん。それに、なんとかしないともう一緒にはいられなくなるってユウくんが言うから…」

「ゆーうーじー?」

「ひっ!!」

環の睨みつける。雄二は怯えて動けない。

「んなわけねーだろ。お前の考えすぎだ」

「だって時間……」

「それは友達が増えたってだけの話しじゃねーか。それともなにか?お前は俺が友達を作るの反対だって言うのか?」

「ううん、違う」

「じゃあ、いいじゃねーか」

そいってこのみの頭をぽんぽんと叩いた。

「確かに一緒にいる時間は減っちまったかもしれないけど、俺がお前の事を嫌うはずがねーだろ?」

「ほんとう?」

「当たり前だ」

胸を張って言う貴明。自信満々である。

「じゃあ、今度このみと遊園地に行ってくれる?」

「おい!なんでそうなるんだ!」

「だって、減った分取り戻したいんだもん」

「うっ」

「だめ?」

しばしの沈黙。

「いいじゃないのよタカ坊。行ってあげなさいな」

それを破ったのは環だった。

「タマ姉」

「このみを心配させた罰よ。それにタカ坊が最近他の娘にでれでれしてるのは確かだしね」

「でれでれなんてしてねーよ」

「あなたがしてなくても、そう見えてる事に問題があるの。いいじゃないのよ遊園地ぐらい。それでこのみの気持ちが収まるなら」

環にそう言われると弱い貴明である。

「ふぅ、わかったよ」

「ほんと!やた〜」

両手を上げて万歳するこのみ

「ふふふ、良かったわね。このみ」

「うん、ありがとうタマお姉ちゃん」

「いいのよ。それよりもタカ坊?このみの次は私にも付き合ってもらうからね」

「ええー!なんでだよ?」

「私も少なからずこのみと同じ気持ちを持ってたんだから、当然よ。それとも私には付き合えないって言うの?」

だってそんなこと言って無いじゃん、というほど貴明は命知らずではない。

「わかったよ。了解だ」

「そう、やっぱりタカ坊はいい子ね」

「さ、話しも纏まったことだし、さっさと学校いかないと遅刻するぜ」

そう言って歩き出そうとする雄二の肩を環が掴む。

「待ちなさい。あなたにはお話しがあるわ」

この場合、お話し=折檻である。

「い、いやでもほら、姉貴も遅刻は拙いよな?」

「心配いらないわ。事が終わったらすぐ行くから」

「こ、事ってなんだよ?!」

雄二の顔が真っ青になる。

「そういうわけで、二人とも先に行っててちょうだい。タカ坊、約束忘れちゃだめよ?

「は、はい!」

そう言って貴明はこのみの手を握り走りだす。今の環に逆らうなと本能が警告しているのだ。

「あ、タカくん……」

このみは繋がっている手を見ていた。

「ん、どうしたんだよ?急がないと拙いんだぞ?」

「うん!そうだね急がないと大変だね!」

貴明の手をギュッと握り締めて、笑顔になるこのみ。

「おう、限界までとばすぜ!」

「了解であります!隊長!」

そうして、二人は仲良く学校に向かうのであった。……バックに雄二の悲鳴を聞きながら。

「ぎゃ―――――――――――――!!」

その日、雄二は学校にこれませんでしたとさ。

 

 

 

あとがき

このみちゃんと雄二くんとをお送りしました。今回は3人称です。いかがでしたでしょうか?

私3人称って殆んど書いたことがないんですよね。なので、出来が低いです。反省するところ多すぎです。でも、慣れてないから仕方ありません(いいわけ)

なら書くなと思うかもしれませんが、このネタ、すごく書きたかったんですよ。欲望に負けてしまいました。すいません。でも、たまには違うことがやりたくなるってことありませんか?

さて、seiさんいかがですか?一応このみがメインなのですが。って聞くまでもありませんね。このみネタはまた必ずだします。

最後に、次は由真ちゃんシリーズを書きたいと思います。書き方は元に戻すつもりなのでご心配なく。あ、あとよければ私のブログのお気に入りからいけるサイト様を一度ご覧下さい。日記を書かれてらっしゃるんですけど、とても面白いです。お勧め。

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