注意:色々と辻褄が合わないところも御座いますが、それでも構わないという方のみお読み下さい。

 

 

 

笹森花梨の陰謀

 

 

 

 梅雨時の気だるい放課後。今日みたいに湿度がインフレ起こしているような日は早急に家へ帰ってベッドにダイブをかましたいところではあるが、こんな日でも部活はあるので今日も今日とて部室へやってきた。ちなみにミス研の活動は基本的に年中無休である。

「ちわー」

無言で入るのも気が引けるので緩い声を出しつつドアをオープン。

「あ、タカちゃん」

「……」

返ってきた声は一つだが、俺に向けられた視線は二つだった。

声を出した方は確認するまでもない、この部屋の主である笹森花梨、通称「会長」の声である。本日はその会長の向かい側にもう一人見慣れない女子生徒が座っていた。

 その女子生徒は腰まで伸ばしたウェーブのかかった髪と意思の強そうな瞳が印象的な、タマ姉と互角のプロポーションの方を持った美少女である。雄二が見たらコンマで口説こうとする事が容易に予想出来るような。

しかし、何で彼女がここに居るのだろう。

もしかしてどっからか拉致ってきたのだろうか。「萌えが必要なのよ!!」とかいうフザケタ理由で……ってそれは無いか。昔ならいざ知らず、今のミス研は結構な人数がいるので、人を集める必要が無いからな。ま、正規部員は俺と会長の二人だけだけど。

「会長、その人は?」 

考えてもどうしようも無いため、素直に疑問を口にする。

「またまたー、何言ってんのよ」

苦笑いを浮かべて右手のひらをぷらぷらさせられても俺にはさっぱりわからない。

それに気づいたのだろう。会長の表情から笑みが消え、変わりに「え、うそ、マジでー?」とでも言いたいようなキョトンとした表情になる。

「会長だよ、会長。本当に知らないの、マジボケ?」

「は、会長?」

それは自分の事だろう。会長の方こそボケてるのか?

「ミス研のじゃなくて生徒会の会長だよ。集会の時とかで絶対見たことあるはずなんだけど」

「ははは、そうだっけ……」

呆れた視線に晒される俺。それが妙に居心地が悪く、苦し紛れに頭をかく。

「でも、会長。生徒会の人がくるなんて、いったいどんな用事なんだ?まさか入部希望者ってわけじゃないんだろう?」

会長がなんかやらかしたって可能性は多いにあるけどな。

「ああ、それはね……」

「この部屋の引渡しを要求しに来ました」

今まで黙って俺たちの話を聞いていた生徒会長が、会長を遮り口を開く。

「部屋の引渡し……ですか?」

「そうです」

コクンと頷き、どこと無く冷めた目を俺と会長に向ける。

「今度、エクストリーム同好会が部に昇格します。そのため部室が必要となり、ここを明け渡してもらう事になりました」

「そういうことらしいよ、タカちゃん」

部屋が足りなくなったから、お前らどっかいけってことか。

「何故うちに?」

「校内の全部活の部員数、活動履歴等を見てこの同好会には部室が必要ないと私が判断しました」

なるほど、部員数が少なくてミステリー研究なんてわけのわからん活動しているからお前らにした、と。

だけど……

「納得していただけましたか?それでは早急に退去の方をお願いします」

それだけ言い放つと、もう用は無いとばかりに席を立ってしまう生徒会長。

そう言われても他のメンバーも使っている部室をそう簡単に手放すわけにはいかない。ここはどうにか考えを変えてもらわなくては。

「あ、スイマセン」

「……なにか?」

俺の声に反応してドアに手をかけていた生徒会長がこちらに向きなおしてくれる。

これでなんとか場は繋いだ。だけど、

「あ、えーっと」

特に何かを考えていたわけでもないので言葉に詰まってしまう。

あ、生徒会長が不信そうな目で見てる。

「……なんでしょうか。用が無いのならこれで失礼させていただきますが」

言葉が出ない。

巧い言い方が出来ない。

これがタマ姉だったらこの場をなんとかできただろう。いや、タマ姉じゃなくてもいい。優季さんや、イルファさん、ミルファ、会長なんかでもなんとかできたはずだ。くそっ、俺は無力なのか。ゴメン、みんな……。

敗北を目前にし、目の前が真っ暗になってしまう。

……。

……。

……ん、ちょっと待て。今、何かおかしかった。確実におかしかった。

異様な違和感を覚えて意識が急速に覚醒する。俺がこの場をなんとか出来ると思った人たちは5人。タマ姉、イルファ、ミルファ、優季さん、会長だ。他の面子だと俺とどっこいどっこいだろう。雄二にいたっては即効で白旗を振るはずだ。色気に負けて。

それはいい。それはいいのだが、問題は挙げた5人のうちの一人がこの場にいるということだ。

会長。そう、この場には笹森花梨がいる。この人なら例え生徒会長相手でも互角の勝負が出来るだろう。しかもミス研創始者だ。黙って部室を明け渡すなんてまず、ありえない。超、ありえない。

「……」

それに気づき隣を見ると会長がすっげー良い笑顔でこちらを向いていた。これはあれか、困っている俺を見てご満悦ってことか?

「……会長」

半眼で睨み付けてやると、奴はバツの悪そうな笑みを浮かべる。

「はは、ごめんごめん。困ってるタカちゃんもかわいいなーって、ね?」

ね?じゃねーよ。そういう人を困らせて楽しむ趣味はタマ姉だけにしてくれ。疲れるから。

「ほいほい」

果てしなく適当に返事をしてくれやがる会長。

……ま、そのことは後で追求するとしてだ。それよりもこの状況をなんとかしてくれよ。

「……」

ちらりと生徒会長の方をみるとどうやら俺たちのノリについていけていないらしく、ポカーンっとこちらを眺めていた。

「全く、人に頼ってばっかりじゃだめよ〜、たかちゃん。そんなんだから「受け」属性なんて言われちゃうんよ?」

ちっちっちと指を振り爽やかに爽快に言い放つ。

誰だよ、そんなこと言う奴は!!

「世の中知らない方がいいこともあるんよ。それより、生徒会長」

急に声のトーンを低くし生徒会長に声をかける。

「……あ、はい。なんですか?」

起伏の激しさに戸惑いを見せるが、直ぐに体勢を立て直す生徒会長。

「一応、この同好会も前生徒会長から承認は貰ってるんです。それをいきなり来て出て行けだなんて些か展開が強引だと思うんです」

「そうかもしれません。ですが、必要な事ですから早いうちにと思いまして」

ハッキリと告げる生徒会長。だが、うちの会長も負けてはいない。

「そうですね。早く私たちが出て行った方がエクストリーム同好会にとっては良いですから。ですが、私もミステリー研究会の会長としてここで首を振るわけには行きません」

胸を張り、一歩も退かず自分の意思を突き通す。

おお、会長。なんかしらないけど今回はやけにカッコいいぞ。俺に出来ない事を平然とやってのける!そこに痺れる憧れる!!頑張れ!

俺の心の声援が届いたのか、一瞬だけこちらを振り向き俺にだけ見える角度で親指をグイッとあげる。任せとけって事だろう。

「しかし……」

少しだけ肩を竦め、苦笑する。

「ウチの活動が外からではよくわからないのも事実。正規部員も私と彼だけですし」

「……ええ。部員の少なさ、それもそちらを選んだ理由の一つです」

「ええ、理解しています。ですから、私たちの所が候補に上がるのも仕方が無いことだと思います」

「……」

「ですが、それだけで私達がこの部室を出て行く理由になるとは思えません。うちは人の数では他に負けていますけど、中身の方では負けてる気は更々無いので」

確かに。俺達は部員数こそ少ないが、活動内容は他と比べてもなんら見劣りしないレベルの事はやっている。いつもあれだけ苦労しているのに人数が少ないから出てけ、では不公平もいい所である。

「そこで、どうでしょう?うちの中身を知ってもらう為に生徒会長が仮入部してみては?」

「私が……ですか?」

「そうです。生徒会長ご自身がうちの活動を体験してみてください。それでも尚、我々が他よりも劣っていると言われるのであれば、私は何もいいません」

「……」

俯き加減で考え込んでいる生徒会長。だが、直ぐに顔を上げる。

「……あなたの言っている事も理解できます」

「じゃあ……」

「はい。暫く様子を見させていただきましょう」

顔の筋肉を少し休めながら生徒会長は頷いた。

これで早急に出て行かなくてもよくなったが、暫くは生徒会長と一緒に部活か……。

……。

……。

……。

……これってかなり大変な状況なんじゃないのか?

話し合ってる二人を見ながら今後の展開に不安を覚えずにはいられない俺なのであった。

 

 

 

あとがき

どうもお久しぶりです。ここまで読んで下さってありがとうございます。

久々の新作、如何でしたでしょうか?

作者的には以前にも増して突っ込み所満載すぎなものに仕上がってしまい、ちょっと凹み気味です。

……まぁ、私的な感想は置いておいて。

今後ですが、一応ミス研withささらでいつもの如くドタバタやっていきたいと思います。

と言っても次回はいつになるのか検討もつかないのですが。

頑張っては見ますので、長い目で見ていただけると幸いです。

ではでは。

 

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