その後、俺は爺さんが周りにいなくなったのを確認してから店を出た
なんてことの無い一日(4)
別に用事があるわけではないので、俺はもう家に帰ることにした。ぶらぶらしているのも時間と金の無駄だからな。そう思いながら家への帰り道を歩いているとき、
「るー!」
聞き覚えのある声がした。…この声は本家のほうだな。俺は振り向き声の主を確認する。
「うー、今帰りか?」
案の上、振り返るとるーこ・きれいなそらが立っていた。
……ウェイトレスの姿で。なぜ?
「…るーこ、お前その格好はなんだ?」
「ウェイトレスの格好に決まっている。目が悪くなったのか、うー?」
「俺が聞いているのはそんなことじゃない!なんでそんな格好でここにいるのか、だ!」
俺たちのいる場所は間違っても喫茶店では無い。
「うーが、るーに気づかないのが悪い。」
るーこはちょっとむくれた顔でそう言った。そういえばさっき喫茶店の前を通ったっけ。
「じゃあ、なにか?お前は喫茶店からわざわざ俺に声をかけるためにここにきたっていうのか?」
「そうだ。るーはうーに気づいていたからな。挨拶は大事だ」
そうか、こいつは俺に挨拶をするためにわざわざ…。
「悪かったな。るーこ。気づかなくて」
その時はぼーっとしていたのかもな。
「まったくだ。たかがうーの死角にいただけでるーのことに気づかないとは。情けない」
「おい!ちょっと待て!死角にいたなら気づくわけないだろ!」
「感知しろ」
「無理だっつーの!」
「なぜだ?るーは仲間が近くにいたら感知できる」
小首を傾げるるーこ。
「!」
ちょっと俺は言葉に詰ってしまった。こいつ、俺のこと仲間だと思ってくれていたのか。…ならしょうがないか。
「あー、はいはい。すいませんでした。次は出来るよう頑張るよ。」
「うむ。精進しろ」
「ああ、で?お前はその格好でこんなところにいてもいいのか?」
「おお、そうだ。るーはバイトの途中だった」
「そうか。じゃあ頑張れよ。」
俺はるーこの肩を叩き、家に帰ろうとする。
「待て、うー」
「ん?どうした」
「もうすぐ終わりの時間だ。一緒に帰るぞ、うー」
「ああ。いいけど」
別に用事も無いしな。
「では、戻るぞ」
「了解」
俺とるーこはきた道を戻っていった。
喫茶店についてから十分後、るーこが店からでてきた。もちろんウェイトレスの格好からは着替えている。
「待たせたな。うー」
「ああ、それはいいんだけどさ、お前途中で店を抜け出したりして怒られなかったか?」
「るーをなめるな。ちゃんと許可を取ってから抜けてきたに決まっているだろ?」
「そうか」
るーこもだいぶ常識人になってきた。うん、良い事だ。
「何をニヤニヤ笑っている?」
おっと、どうやら顔に出ていたらしい。
「ん、なんでもないよ。じゃあ、行こうか」
「わかった」
そうして俺とるーこは並んで歩き出した。
「そういえばさ、るーこ。聞きたいことがあるんだけど」
帰り道、俺はるーこに今日一日疑問に思っていた事を尋ねてみることにした。
「?」
「お前、なんで今日学校来なかったんだ?」
そう、こいつは今日学校をサボりやがった。
「なんだ、そんなことか」
「そんなことって、お前学校には行かないといけないんだぞ?」
「るーはうーよりも頭がいい。わざわざ学校で勉強する必要はない」
「そりゃそうだろうけどさ、学校って勉強だけじゃないだろ?」
「友と会う為の場ということは、るーも理解している」
「じゃあ何で?」
「仕事を覚えるためだ」
「仕事って喫茶店の?」
「うむ。いかにるーがうーより優れているとはいえ、慣れてない事をやるのにはやはり時間がかかる。それにアルバイトは良い社会勉強になると、うーも言っていただろう?」
確かに。る−こが喫茶店の店長にバイトをしないか、と言われたときにそう言うことを言ってバイトを勧めたのは俺だ。
「なんだよ。妙に熱心だな」
「うーで生活していく以上、うーの常識は身につけておく必要があるからな」
「……お前、まだ帰れそうにないのか?」
信じられないことだが、るーこは宇宙人らしい。不思議な力も持っている。
「……仲間からの連絡はまだ無い」
るーこの声が少し沈んだきがした。
「だが、るーは信じている。だから大丈夫だ」
「そうか」
見知らぬ土地で仲間を待ち続けるのはどんな気分だろう。不安でないはずがないのは確かだ。でも、るーこはそれを表には出さない。
「おまえがそうやって信じてるんだ。絶対にくるさ」
「当たり前だ。るーは、るーを見捨てない」
信じられることも強さだろうな。ホント、るーこは凄い。
「でも、最近るーは帰れなくてもいいと思っている」
「なんでだよ、家族に会いたくないのか」
「会っていなくても絆は消えない。それにるーは理解した」
「何を?」
「うーはるーの仲間が言うような悪い奴ばかりではない。るーの判断は間違っていなかった」
そういえばこいつ、人間がどんな奴らなのか自分で判断するために来たんだったな
「るーは、うーのことをもっと良く知りたくなった。知るためにはまだ帰るわけにはいかない」
「人間のお株が上がったってところか」
るーこにとって価値のあるものに見えてきたのだろう。
「それも、これもうーのおかげだ。感謝する」
「おいおい、俺は何にもしてないぜ?」
「うーは色々な事を教えてくれた。るーは恩を忘れない」
「いや、そう面と向かって言われると照れるというか……」
「だから、るーがこのまま地球にいたらうーの妻になってやってもいいぞ」
「ぶっ!」
つ、妻ってあんた、いきなりなにいうてまんねん!
「なんだ、るーでは不満だというのか?」
「い、いや、そうじゃなくてな…」
「るーほどの妻はなかなかいないぞ?狩も得意だ」
狩はどうでもいい。
「あの、えーと…」
やばい、顔が熱い。多分真っ赤だ。
「ふふふっ」
るーこがクスクス笑い出した。
「冗談だ。うー、顔が真っ赤だぞ」
「なんだよ、冗談だったのか。驚かせるなよ」
「無論だ。うーではるーに釣り合わない」
「あー、そうですか」
いい様にからかわれたようだ。けっ!
なんて会話をしている内に、るーこが住んでいる公園まできたようだ。
「さて、ここでお別れか。じゃあな。明日は出来るだけ学校にこいよ。バイトはその後でもいいんじゃねーの?」
「わかった。うーがそういうなら考えておこう」
「ああ、そうしてくれ」
手を上げて答え、俺は自分の家へ向かう。
「うー」
「ん、なんだ?」
「うーには見所がある。」
「はぁ?」
いきなり何言い出すんだこいつは。
「これからも精進しろ。そうしたら嫁の件、真剣に考えてやる。それだけだ。おやすみ」
そういうと、るーこは公園の奥に行ってしまった。後に残された俺。
「精進て、なにをだよ……」
やっぱり狩なのだろうか?
公園と自宅はそう離れていないので、家に着くまで時間はあまりかからなかった。
飯食って風呂入ってもう寝ようとした時、俺はある事を思い出した。
「雄二のやつ、あれから如何したんだろう?」
さすがにもう家に帰っているだろう。電話でもしてみようか。
「いいか、もう眠いし。明日どうせ会うだろう」
そう言うことにして俺は瞼をとじ、襲ってくる眠気に身を任せるのだった。
追伸
雄二は次の日は学校に来たがたま姉のお仕置きにより、朝からボロボロだった。……合掌。
あとがき
これで、一応なんてことの無い一日シリーズは終了です。今回の主役はるーこです。今までのより少し短いですが、独壇場だったのでまあいいかなと。次回は番外編を書けたらなと思っています。ちゃるとよっちを出したいです。好きなんですよ、この二人。たぶん今回のよりも更に短くなるのでブログのほうに載せると思います。ご暇があればどうぞ。
最後に感謝の言葉を。おかげさまで2000ヒットを超えました。これからもできるだけ更新していきたいと思っておりますので、ご暇な方はまた訪れて下さい。
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