「と、言うわけで!!」

そこで大きくタメをつくって全体を見回す会長こと笹本花梨。

もちろん彼女の前にいる人物達とはミス研の濃ゆいメンツ、河野貴明と愉快な仲間達である。

そして今回は特別ゲストとして向坂環他、貴明の関係者(女性のみ)も全員集合中。中には人間じゃないのも混じっているがそれはそれ。こんなメンツが集まっているのだ、それぐらいは些細な事である。

そしてそれぞれが片手に飲み物持参で会長の挨拶を今か今かと待っている状態だ。

何故こんな事をしているかの理由はカレンダーを見てくれればご理解いただけるだろう。

今日は一月一日、歳の初めの元旦である。

と、くればこの人が騒がない理由が無い。

そう、今は会長主催の新年会の真っ最中なのである。

 

 

 

新年会

 

 

 

「みんなー!!明けまして、おっめでとーーーーーーーーーう!!!」

『おめでとーう!!!!!』

会長の号令に合わせて掲げられるそれぞれのグラス。

その後に『カンパーイ』と合唱しカチーンカチーンと断続的に乾いた音を発生させて今日の日を祝福する。

グラスを持つ彼らの顔に描かれているものは唯一つ。

心からの笑顔、それだけである。

あまり感情を出さないちゃる、いつも何処と無く不機嫌そうな郁乃、そしてあの無表情大王のミルファすらも今日のこの時は顔を喜色に染めている。

そんなメンバーを見て会長も満足そうに頬を緩めて頷いた後手を大きく広げ、

「挨拶なんて堅苦しいものは抜きにして、あたしの言いたい事は一つだけ!!」

そこで大きく息を吸い込み、

「みんなー!!たのしもーねー!!!」

と楽しくて楽しくてしょうがないということを全身で示しながら言葉を発した。

それと同時に聞こえてくるわいわいがやがやというはしゃぎ声。

時刻はまだ夜だというのに人数が人数だけあってかなりの音量である。

近所迷惑と思われるかもしれないが、その点は心配無用。

ここはなんの変哲もない公園に見えるがその実、この季節でも寒さを感じないという世界でも稀な不思議空間である。花梨の注意事項もここを起因としている。

そしてこのミステリーの原因はもちろんこの方

「るー」

と現在貴明にタコのようにべったりと張り付いている自称宇宙人のるーこ女史である。

この人の使う確立操作『るー』はご存知の通り他人の為に使える数は限られているが、自分の為に使う数には制限がない。

よって、今回は思いっきり『自分』が楽しむため黒服がこないよう防音ばっちりにしたのだ。気温変化と人よけはここに住むにあたり真っ先に行っていたため今更特筆するものではない。

とまぁ、今回この人数で盛大に盛り上がれるのはこの人のお陰なのだが……

「るー(スリスリ)」

「誰だー!!るーこにコーラを飲ませた奴はー!!!!」

本人は既に酔いつぶれていた。

急な展開に周りのメンツが喋るのをやめて貴明に視線を送っている。

そして事態を理解していくにつれてその目には厳しい色が宿っていく。

だが若干、いやかなりきつめの視線を浴びても彼女は全く動じず

「ふふ、うーは愛い奴だな。そんなに照れずとも良い」

そう言ってスーリスーリと貴明の背にもたれながら頬を摺り寄せる。

「どこのお殿様だお前は!!」

「あははー、良かったねータカちゃん。もてもてでさ!!」

「……やはりというかなんというかやっぱりなのか?」

このタイミングで会長が出てきた事にある意味お約束なにかを感じながらもるーこを体に貼り付けたまま半眼で花梨を睨みつける。

「えー、何がー?ただ花梨ちゃんるーこちゃんにコーラ注いで上げただけだよー?」

「こいつはそれで酔うんだってこの前教えただろうが!!」

自分の背でこなき爺化している宇宙人を指差しながら元凶に向けて怒鳴り散らすが、

「いやー、やっぱり自分で確かめないと納得できなくてさ」

そいつは悪びれもなくたははーっと頭をかくだけだった。

「そんな事は二人だけの時にやれ!!」

「いいじゃんよー、今日は無礼講で行こうじゃないのさ!!」

ははは、と楽しそうに貴明の肩をバシバシと叩く花梨。

「そうだぞ、うー。今日はぶれいこーだ」

それを真似して顔を赤くしているるーこもペチペチと同じように叩く。

「と、いう事で注げ」

「お前、もう飲んだのかよ!」

「いいじゃん、ご指名なんだよ?こーんな可愛い子のお酌ができるなんてタカちゃん年明けからはっぴーだね!!羨ましい限りさ!」

く、人事だと思ってと文句を言おうとした貴明だが、

「ではあなたが面倒を見てください」

それは突然の乱入者によって妨げられた。

声の主はるーこを片手でヒョイと持ち上げそのまま花梨の背へと落とす。

「る?」

「うわ!」

急な出来事で疑問符を浮かべるるーこに重みに驚く花梨。

だが声の主―ミルファは二人の状況など全く視界に入れずコーラのペットボトルを会長に押し付けた後、展開について行けず呆然としている貴明の方に向き直りその首をむんずと掴み無理やり場所を移動させる。

そして連れて行かれるのは珊瑚達の陣取っている場所の中心。

ミルファが貴明を座らせると同時に、その周りを囲む姫百合ファミリー。

その布陣は隣にイルファ&珊瑚、前方にミルファそして後方に瑠璃で4人でしっかりと押さえ込む形になっている。

序盤でみんなが様子見をしている時にいち早く行動し、最善の結果を得る。

作戦イルファ、実行ミルファによるナイス先制パンチなのであった。

「よっしゃ〜ミッちゃん!たかあきゲットや〜」

「偉いですよ、ミルファちゃん」

貴明の訪問に彼の隣で歓声を上げる二人に「当然です」と胸を張るミルファ。残りの双子の一人も、何も言わないがまんざらではない顔をしてその場を離れようとはしない。

幸せ空間を作る4人であるが、しかし突然の貴明強奪に不満を覚える人たちがこの場には多数いるため、そうは問屋が卸さない。

「あー!珊瑚ちゃん、ずるいでありますよ〜!!」

「そーッスそーッス!!力技は反則ッスよ〜」

「よっちに同意。捕虜の返還を要求する」

「そーであります!!タカくんを大人しく解放してくださいであります!!」

「あなたの親族も草葉の陰で泣いている」

「……いや、さすがにそれはないっしょ?」

何だかわけのわからない事を言っているこのみ&ちゃるに突っ込みを入れるよっちに

「ほら、お姉ちゃん何か言わないと!!このまま取られてていいの?」

「え、え?な、なんて言えばいいの〜(泣)」

「あー、もう勝手に取るな〜、とかこのままではおわらんぞ〜、とかよ!!」

「あー、もう勝手に取るな〜、とかこのままではおわらんぞ〜、とかよ!!、なのよ!!」

「え〜い!そのまま言うな〜!!」

「……あんたら漫才してるの?」

何だかよくわからない事を言っている小牧姉妹に突っ込みを入れる由真。

酒は飲んでいない筈だがこれも宴会の魔力なのか一部では随分とテンションが上がっているご様子だ。

だが、こう口々に騒いでいる人間はそれほど怖くない。

その証拠に今回の首謀者であるイルファ&ミルファの視線の先にはこの二人。

「もちろん、後でこちらにもタカ坊をまわしてくれるのよね、イルファさん?」

「ついでに私の方にもお願いしますね、ミルファさん」

他と比べて声量は無いが、はっきりと自分の主張を相手に届かせている環&優季であった。

その他大勢はいくらでもあしらえるが、流石にこのコンビとなると話は変わってくるのでメイドロボ姉妹は顔を見合わせ難しい表情でアイコンタクトを交わす。

「(現在の戦力でこの方たちを相手にするのは骨ですね、ミルファちゃん)」

「(そうですね。ここは退いておくのが得策でしょう)」

そして次の瞬間にはもうお互い元の顔に戻り、

「ええ、もちろん。貴明さんが困っていられたようだから助けてあげただですよ、ねぇ?」

「その通りです、姉さん」

などと何食わぬ顔で言ってのけるのだった。

もちろん、今更それが本音ではないと知っている二人なのだが、

「ふふふ、ちょっと聞いてみただけよ」

「ええ、これっぽちも疑ってなどいませんよ?」

同じく先ほどのやり取りなど何処吹く風と、平然と応えるのだった。

そんな彼女達を騒ぎの外から眺めていた瑠璃は、一連のやり取りに頬を引き攣らせながら

「く、黒い黒すぎる。さんちゃん、あんま近づかんようにしよう。うち、あんなの巻き込まれとうない」

同じ顔をした姉に耳打ちするが、忠告された本人はそんな事など全く気にしないで

「みんなほんまにたかあきの事すきすきすき〜なんやな〜」

といつもの調子でるーっと手を上げて微笑みを浮かべる。

「さんちゃん……人の話し聞いて」

最近ますます自分の意見を聞いてくれなくなった姉に対し溜息を禁じえない瑠璃なのだった。

 

そしてその後の事はもう、貴明にとっては新年最初の災難と言ってよいだろう。

「タカ坊―!ちょっとこっちきてお姉ちゃんにお酌しなさーい!!」

「あ、タカくんこのみもー!!」

「あーはいはい」

とくとくとく

「有難う……うん、やっぱりタカ坊が入れてくれたほうが美味しいわね」

「そうだね、タマお姉ちゃん!!」

「……ジュースなんて誰が注いでも変わらんと思うんだけどなー」

「そんな事ないわよ、ねー、このみ」

「うん!!」

「え、それマジ、このみ?」

「タカくんの愛が感じられるでありますよ!!」

「んなものは感じられん!!」

「愛……せんぱーい!こっちにもお願いしマース!!愛ダクでー!!」

「ついでに私のも以下同文」

「えーい、本気にするなー!!!」

などと丁稚扱いさせられたり、

 

「あ、貴明さん。この煮つけ私が作ったんですよ。お一ついかがですか?」

「うん、頂くよ」

「では、お口を開けて下さい」

「え?」

「はい、あーん」

「え、え?」

「あーん」

「いや、ちょっと流石に……」

「……貴明さん、私が作ったものなんて食べられないとおっしゃるのですか?(悲しそうな顔)」

「う、わかったよ(口を開ける)」

「はい……「注いでやろう、うー」え?」

ごぼごぼごぼ……

「が!!げふ!?ごぼ??!」

「……うー、るーが直々に注いでやったのにこぼすとは何事だ?」

「いきなりコーラを口に突っ込まれたら誰でも咽るわ!!」

「ふ、無様だ」

「こ、この野郎……!!」

「まぁまぁ、貴明さん、これでも食べて落ち着いて下さい(苦笑)」

色々と食べさせられたり、

 

「あ〜、たかあきくんだ〜、えへへ〜」

「お、おいどうした愛佳!顔が真っ赤だぞ!!」

「えへへ〜、今あたしはと〜〜っても気分がいいんでふよ〜」

「ああ、そんなのは見ればわかるけど、何か酔っ払い見たいだぞ?」

「なので、ここで一つじゅ〜だいはっぴょ〜をしたいと、思います!!こころして聞くように〜!!いいですか!!」

「いや、それよりも人の話しをだな……」

「ちゃんときく!!」

「……はい」

「よろしい、では……(こほん)」

「(絶対こいつ酔ってるよな。誰だ、酒なんてもってきたの……ってそんなの一人しかいないか)」

「わたくし!!小牧愛佳は!!

「はいはい、愛佳は?」

「河野、貴明くんの事を!!」

「俺の事を?」

「……!!」

そこで急に顔の温度を上昇させ、ドモリ出す愛佳。

それを不思議そうに見る貴明。

「す、すす……!」

「煤?」

「す、すすすす、すき……」

「ススキ?」

「ちっがーう!!もう、たかあきくんの朴・念・仁!!」

「そうよ!おにいちゃんのぼく・ねん・じん!!」

「おわ、郁乃?!どっから?!てかお前も顔真っ赤だぞ?」

「そんな事はど〜でもいい!!今大事なのはおにいちゃんがおんなったらしだってこと!!」

「そうだ!!たかあきくんのプレーボーイ!!」

「なんでそんなに女に甘いのよ!!」

「そうだそうだ!!この色魔〜!!」

「期待持っちゃうじゃない!!せきにんとれ〜!!」

「そうだ、せきにんとれ〜!!」

「……何を言っているのかさっぱりだ」

「なんだと〜、大体おにいちゃんはねー(以下説教)

「そうよ、たかあきくんはねー(以下同じく説教)」

「(俺はこんな所で何してるんだろう?)」

酔っ払い姉妹にえんえんと説教されたり、

 

「あ、タカちゃん♪」

「『あ、タカちゃん♪』じゃ、ねー!!会長だろ、あの二人に酒なんて飲ませたのは!!」

「う〜ん、軽ーい酎ハイだったんだけどねー。あんなになっちゃうなんて花梨ちゃん超驚きさー」

「ちなみにあの二人は酒だと知っていたのか?」

「はっはっはー、まっさかー。もちろんただの炭酸って言って飲ませたさー(グッと親指を上げる)」

「俺にはそっちのほうが超驚きだーーー!!!」

「いやー、タカちゃん新年早々血圧高いねー」

「誰のせいだ!!」

「もう、貴明うるさいわよ」

「うるさいって……あん、なんだ由真いたのか」

「うわ、超失礼なやつ!!」

「いや、だって普通いるとは思わないだろう?お前と会長なんて共通点皆無じゃん」

「ちっちっち、実はあったんだなー。タカちゃん関係で」

「俺?」

「そ、どうすれば貴明を手玉に取れるか。今それを話している真っ最中なのよ。だからあんまり騒がないでくれる?」

「おい(ビシッ)」

「こうしてきちんと喋ったのは今日が初めてなんだけどねー。タカちゃんのいじりかたについて話し合ってるうちに話が弾んじゃって弾んじゃって。もう今ではすっかり仲良しさ!!サンキュー、タカちゃん。いい出会いが出来てあたしは嬉しいよ!!」

「そうね、その点では感謝してあげてもいいわ」

「そんな感謝のされ方、全然嬉しくねー!!!」

叫ぶ貴明をサラリとスルーし、お互いに向き合う花梨と由真。

真剣な顔をし、話し合う。

「と、まぁこんな風にいじるのよ。ここは覚えておくポイントね」

「なるほど(メモメモ)」

「やめい!!」

といった感じに未来に大きく不安を抱かされるような話を聞かされたり、

 

「あー、なんかすっげー疲れた」

「お疲れさまです、貴明さん」

「ああ、イルファさん」

「飲み物をご用意しています。如何ですか、貴明様?」

「ありがとう、ミルファ」

どっかりとその場に腰を下ろす貴明。その隣にイルファとミルファが世話の為に張り付く。

「どうぞ、オレンジジュースです」

「疲れた時には甘いものが良いので栗きんとんを用意しました。私と瑠璃様で作ったんですよ。味は保障付きです」

「ふー、悪いね二人とも色々してもらっちゃって」

「いいえ、これがメイドロボの本業ですから(今の貴明さんに優しく接すれば……)」

「貴明様はお気になさらないで下さい(点数アップは間違い無し。流石ですね、姉さん)」

「ん、どうしたの二人とも見合っちゃって?」

「いえいえ、大した事ではありませんそれよりお味は如何ですか、貴明さん?」

「うん、おいしいよ」

「この伊達巻は私がつくりました。是非、ご賞味を」

「それはもう、喜んで」

美人メイドロボから至れり尽くせりな貴明。そんな彼を少し離れたところから眺める姫百合姉妹。

「ええなー、イッちゃんもミッちゃんもたかあきとらぶらぶらぶ〜で。羨ましいわ」

「いや、あれはラブというより、もっとこう欲望渦巻くというかそういった感じをうちはうけるんやけど?」

「でも、我慢せなあかんねん!!ここで二人がぽいんと稼いでたかあきめろめろにすればみんなで一緒に暮らしてらぶらぶらぶ〜になれる道が開けるねん!!」

「……さんちゃん、一応自分が行ったら騒がしくなるのわかっとったんやな。つーかまたうちの話聞いとらへんし」

「だから、一緒に我慢しような!瑠璃ちゃん!!」

「はー……まぁ、ええわ。うちはさんちゃんと二人でいられれば十分や」

「またまた〜、本当はたかあきと居たいのにな〜。瑠璃ちゃんのテレ屋さん!」

「う、うちは別に……」

「ははは、瑠璃ちゃん顔真っ赤や〜」

「う〜、さんちゃんがいじめる〜」

気付かないうちにメイドロボの策略に嵌っていたり、

 

「ほら、早くタカ坊こっちにいらっしゃい!!」

「タカくーん!!」

「次はあたし達のところだよね、タカちゃん!!」

「え〜、あたし達だよ〜」

「そうよー、まだこっちはおにいちゃんに言い足りないんだからねー!!」

「ほらほら、貴明さん。こっちの水の方が甘いですよ?」

「うー、四の五の言わずこちらへこい!」

「私達が一番ですよね、ミルファちゃん」

「当然です。姉さん」

「う〜、やっぱうちもたかあきとらぶらぶらぶするー!!ほら、瑠璃ちゃんも一緒に!」

「う、うちも?!」

『◎△×◇□*+?>|‘@¥〜0:@;・(口々に色々な事を言っている)』

「あー、もう俺の体は一つしかねえっつーの!!」

とどなりながらも色んなところからお声がかかるたびに休む暇も無くあっちいったりこっちいったりさせられる貴明なのであった。

この扱いは新年会が終わるまでずーっと続けられ、終わった頃には貴明はへとへとのバテバテだったという。

もう最後の方では不満よりも『今年もまたこんな扱いなんだろうなー』といった諦めの気持ちが大きく貴明の心を埋め尽くしてしまい、思わず大きく息を吐く貴明なのであったとさ。

 

 

 

おしまい

 

 

 

あとがき

書きたい事書いてたらなんかメチャクチャになってしまいましたよ?

でも、まぁ楽しかったのでよしとしよう。うん(自己満足

というわけで遅くなりましたがみなさま、あけましておめでとうございます。昨年よりも精進致しますので今年もどうぞ当サイトに足を運んでくださるよう心よりお願い申し上げます。

と、新年のご挨拶(おせーよ!)をした所で今回はおしまいです。また次回でお会いしましょう。

ではでは。

 

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