タマ姉の髪の色
「なぁ、雄二」
学校の帰り道、歩きながら貴明が雄二に話かける。
「あん?なんだよ貴明」
「前から疑問に思ってたんだけどさ、なんでおまえとタマ姉って髪の色が微妙に 違うんだ?ほら、お前のよりタマ姉の方がより赤みがかかってるだろ?」
軽い気持ちで質問したであろう貴明の事をじっと見つめる雄二。
「……聞き、たいか?」
いつもでは考えられない神妙な表情で口を開く。
「あ、ああ」
その反応に少し戸惑いながらも頷く貴明。
「……どうしても?」
「な、なんだよ。もったつける奴だな」
しかし、貴明の言う事には何も応えず、雄二はしばし目を閉じる。
それと共に周りの空気もシンっと静まりかえった。
「ゆ、雄二?」
「姉貴はな、……先祖返りだから」
目を開け、貴明の事をじっとみながら、静に言い放つ雄二。
「は?」
言っている事の意味がわからずはてな顔になってしまう。
だが、そんな事は無視し、雄二は話を続ける。
「向坂家ってずーーーーーっと昔、それはもう平安とか奈良辺りに鬼の血が入った事があるんだとさ」
「鬼の血?!」
あまりの事に思わず驚きの声を上げてしまう貴明。
目と口を大きく開き、信じられないといった表情で雄二の顔をみている。
「そう、鬼の血。なんでそんなものを取り入れたのかなんて俺は知らない。俺が知っているのは、子孫に時たまその血を濃く受け継ぐ物が現れるって事だけだ」
「それが、タマ姉?」
貴明の問いに大きく頷く雄二。
「そうだ。お前もおかしいと思った事はないか?姉貴のあの力。女の身としては大きすぎる」
「ま、まぁ、確かに」
「あれは鬼の血が姉貴に力を与えているんだ。うちの家系には時々でるんだよ。強い力を持った奴が。そして、そいつらは総じて髪の色が、紅い」
「じゃ、じゃあ、タマ姉の髪が紅いのって!!」
「鬼の力の、象徴だ」
ガーン
その衝撃で貴明は崩れ落ち、地面に両手をついてしまう
「ま、まさかタマ姉にそんな秘密があったなんて……」
「しかもそれだけじゃない。姉貴には他に周囲から意識を奪い取るという力も備わっている」
その言葉に顔を上げ、雄二を見上げる貴明。
「意識を、奪う?」
「俺達は姉貴の言う事には逆らえないだろ?いや、ほとんどの奴が姉貴に何か言われたら逆らう事なんて出来ない。それは姉貴が周りから『逆らう』という意識を略奪してるからなんだ!!!」
「そ、そうだっ……!!!」
セリフの途中で動きを止めてしまう貴明。その目は雄二の後ろを凝視している。どうやらその『何か』を見て、動けなくなったようだ。
そんな事とは露知らず、貴明が驚きのあまり言葉を失ったと思い込み更に喋り続ける雄二。
それが、自分の寿命を縮める結果になるとは知らずに……。
「あまりの事実に驚くのは無理もない。だが、これでわかったろう?あの化け物がどんなに危険かってことが」
「へぇ、『化け物』って誰のことかしら?」
雄二の背後から声が降り注ぐ。
明らかに怒気を含んでいるが、調子に乗っている雄二はそれに気づかない。
「誰ってもちろんあね……!!」
ようやく雄二は気が付いたのだ。自分を取り巻く濃厚な殺気に。
それを意識したとたん、バッと冷や汗をかき、その場から一切の行動が出来なくなってしまう。
「ねぇ、誰の事?お姉ちゃんに教えてくれないかしら?」
声の主――――――環は雄二の状態などお構いなしに言葉を続ける。
今まで感じた事のない圧倒的な恐怖に、殺気を向けられていない貴明でさえ、がくがくと震えている。
「あ、姉貴?いつからそこに……」
止まっていた雄二が、環に急かされてやっと首だけ動かし後ろを向く。言葉を発する事は出来るものの、首から下は完全に固まっている。
「そうね、向坂家には鬼の血が混じってるなんて戯言の辺りかしら?」
「ひ、ひィーーーー!!!」
つまり、全部聞かれたと言う事である。
途中貴明が動けなくなったのも雄二のヨタ話で我慢出来なくなった環が、雄二の背中に近づいて来たのを視認したためである。(環は少し距離を開けて雄二の話を聞いていた)
「面白い事考えるわねー?私にそんな能力があるなんて知らなかったわ。ぜひ、試させてくれないかしら?」
雄二の顔を覗き込んでニッコリと笑う。
が、その笑みはとは裏腹にと体からは殺気をビンビンに出している。
「いや、その……」
恐怖で言葉を上手く出せず、首だけを猛烈な勢いで振るう。
だが、足が竦んで動けないため、どんな行動も無意味だ。
「そう、遠慮せずに、ね?」
そう言うと、雄二の頭を右手でガシっと掴む。
「あんた、言ってたわよね?意識を略奪するって」
だんだんと掴んでいる指に力を込めていく環。
雄二の顔に苦悶の表情が浮かびはじめる。
「なら、お望みどおり!」
ミシミシと頭から危険な音を響かせながら、雄二の体が宙に浮く。
「すべて、奪いつくして差し上げますわ!!!」
「み、みぎゃーーーーーーーーーー!!!!!」
片手一本で吊るされている雄二から、絶叫がほとばしる。
しかし、そんな雄二の事などお構いなしに、指に力を込め続ける環。
まるで、本当にすべての意識を吸い出すかのように……。
「(お、鬼だ。鬼がいる!!!)」
ダメだとわかっていても思わずそんな事を考えてしまう貴明なのだった。
「わかってると思うけど、雄二が言ってた事は全部嘘だからね、タカ坊」
雄二の意識を刈り取った後、まだへたりこんでいる貴明の方にやってきてそう告げる環。
「も、もちろんさ。タマ姉。当然だろ?」
さっき考えてた事を口に出した日には雄二の二の舞になることは明白である。
そのような愚行をするほど、貴明は世渡りベタではない。
「そ。ならいいんだけど。ところでタカ坊、なんでそんな所に座ってるの?どこか怪我した?」
心配そうに貴明の顔をのぞき込む環。先ほどとはまるっきり別人である。
「は、はは。ちょっと転んじゃってね。今立つよ。……ってあれ?」
立とうとしても足に力が入らない。まだ恐怖が抜けきっていないようだ。
「もう、しょうがないわね」
そう言うと、貴明の腕を掴んでよっこいしょっと立たせてやる。
「あ、ありがとうタマ姉」
「タカ坊は私がいないとダメねー」
恥ずかしそうに下を向く貴明を見て、顔がほころぶ環。
そのまま掴んでいた腕を自分の肩にまわし、貴明の腰を掴み歩き出す。
俗にいう『肩を貸す』という体勢を環はとったのだ。
「な、ちょっとタマ姉!!」
「何よ、おんぶの方がいいの?」
「い、いやそれはさすがに……」
歩けないとはいえこの年齢でおんぶ、しかも女性にされるともなれば恥ずかしくないわけがない。
黙って環の肩を借り、自分も歩きだす貴明。
「ん〜、やっぱりタカ坊っていい匂い。お姉ちゃん幸せだな〜」
貴明の首に鼻をスンスンと近づけながら言う。
「何言ってんだよタマ姉!!」
環のその行為に顔を羞恥の色に染めながら声を上げる。
「あ、顔が赤い。照れてるの、タカ坊?か〜わい〜」
貴明のほっぺたをちょんちょんとつつきながらニコニコする環。
逃げようともがく貴明であったが、腰をがっちりと掴まれているため、環から離れる事が出来ない。
「う〜〜」
そのため唸り声しか上げられない。
だが、こんな貴明の態度も環には愛しくてしょうがないようだ。
さっきから笑みが顔にこびりついたまま、離れていない。
「あ〜もう、ホント、タカ坊って最高!!何から何まで私好みだわ。ねぇ、このままお持ち帰りしちゃってもいい?」
「ダメに決まってるだろ!!」
「え〜、じゃあ私がお持ち帰りされるわ」
「それもダメ!!」
「もう、我侭ね〜、タカ坊は」
クスクスと、本当に楽しそうに笑いながら環が喋る。
何年も離れていた貴明と、今はこんなに近くでふざけあえる。触れ合う事ができる。
その事実が環にとってはこの上なく楽しくて仕方がないのだ。この時間を切り取ってどこかにしまってしまいたいほどに。
「なんだよ、タマ姉。さっきから笑ってばっかりで何が楽しいんだよ?」
しかし、鈍い貴明はそんな環の気持ちなど、全く気づかず
(またタマ姉が俺の事からかってるよ)
ぐらいしか思っていない。
そんな鈍さでさえ、今の環には可愛くて可愛くて仕方がないのだ。
「でも、もう少し女心を学んでほしいわよね」
「はぁ?」
「何でもないわ、こっちの事よ」
それはおいおい教育していけばいいわよね?
そんな事を考えながら夕日の中を幸せそうに歩いていく環なのだった。
おしまい
おまけ
「だ、だれか助けて……」
「わ、ユウくんどうしたの?!」
雄二は虫の息だった所をこのみに助けられてなんとか助かったが、しばらくは環の奴隷だったという。
人、それを自業自得という。
……お後が宜しいようで。
あとがき
最近気づいたんですが、タマ姉の声って月姫の秋葉と同じ声なんですよね〜。
と、言う事で今回は声優ネタです。メルブラの秋葉の超必が頭から離れずこんなネタになってしまいました。
ちなみにかかった時間は3時間。いや〜、適当に書くと早いですね。その分内容が雑ですけど.
ま、適当に読み流してやってください。ああ、それから私的イメージで雄二の髪の色は茶色っぽい赤、タマ姉は真紅です。公式サイトみたら同じに見えますが、その辺はネタということで勘弁してくださいね(おい
それからこういうネタは個人的に大好きなのでまた書きたいと思っています。まぁ、こんなに長くはならないでしょうけどね。
それでは今回はこの辺で。次回は『続なん』の続きでお会いしましょう。
さよ〜な〜ら〜。
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