似た者同士

 

 

 

学校の帰り道、少し喉を潤そうと、俺はるーこの働いている喫茶店へと足を運んだ。

「えーっと空いている席はっと……」

今日はやけに人が多く、外はなかなか空いている席が見当たらない。店内なんか満席だ。

俺がキョロキョロと外で席を探していると、

「あ、たかあきく〜ん!」

俺を呼ぶぽやや〜んとした声が聞こえてきた。声のした方を向いてみると愛佳がこちらに向かって手を振っている。

とりあえず立っていても仕方がないので愛佳の所に向かうことにした。

 

「お、珍しい組み合わせだな」

4人掛けの席に小牧姉妹と優季さんが座っていた。愛佳はニコニコ、郁乃は上目遣いでこちらをじーっとみている。優季さんは俺と目が合うとにこっと微笑した。

「あれ?たかあきくんって優季さんの事知ってるの?」

ふと、疑問に思ったのか首を傾げながらこちらを見てくる。

「まぁな。小学校の頃一緒だったんだ。途中で転校しちゃって別々になったけどな」

「ええ、そしてこの学校で運命の再会をしたんですよね」

その『運命の再会』までに色々な事があったが、それは俺と優季さんだけの秘密だ。話しても誰も信じなさそうな事だしな。

「運命の再会か〜。なんかロマンチックだね〜」

「そう?ただの偶然だと思うけど?」

両手を合わせてぽや〜んとしている愛佳に冷静に突っ込みを入れる郁乃。性格が全く似ていない姉妹である。

「そういう愛佳はどこで優季さんと知り合ったんだ?」

確かクラスは別々だから接点はないはずなのだが。

「たかあきくん知らなかっけ?優季さんは文芸部員なんだよ」

「転校してすぐに入部したんですよ」

なるほど。優季さんゴミ箱ノートに詩とか書いてたもんな。ぴったりだ。

「で、お姉ちゃんと優季先輩お互い紅茶好きってことですぐ仲良くなったってわけ」

で、郁乃も巻き込まれたってわけか。

「ということはここには紅茶を飲みにきたの?」

「そうです。愛佳さんが誘ってくれたんですよ」

「うん、最近ここの紅茶って評判いいからね〜。ちょっと楽しみ」

そう言ってニヤニヤ笑う愛佳。よほど楽しみなんだろう。目じりが下がりっぱなしだ。

「でも結構待ってるのに全然来ないんだよね」

 頬杖をついて溜息を漏らしながら郁乃がいった。

「仕方ありませんよ。それだけ人気があるってことです」

「へぇ〜。なんて名前の紅茶なの?」

そんな俺の問いに愛佳がメニューを読み上げる。

「え〜っと、『るーすぺしゃる』って言うんだって」

「ぶふっ?!」

思わず吹いてしまった

「ちょっとお兄ちゃん、汚い」

いやそうな顔をされてしまった。

「ああ、すまんすまん。あまりにも変な名前だったからな」

「あ、やっぱりそう思う?」

「当たり前だ。こんなの誰でもおかしいと思うに決まってる」

「でもあの二人は違う見たいだけど」

愛佳と優季さんを見る郁乃。

「え〜、別に変じゃないと思うけどな〜」

「面白くていい名前だと思いませんか?」

二人の意見を聞いた後郁乃が再びこちらを向く。

「と言う意見があるんだけど?」

こ、こいつら……。

「まぁお姉ちゃんも優季先輩も似ている所あるしね。価値観が似ていても不思議じゃないわ」

「ほう、お前はどこが似てると思うんだ?」

「天然な所」

うわっ!即答!こいつ本人達の前で言い切りやがった。

「本好きとか紅茶好きっていうのもあるけどやっぱり一番はそれだと思うわ」

「え〜、郁乃、あたしは天然じゃないよ〜」

いや、愛佳が言っても説得力はないから。

「私って天然なのでしょうか?」

不思議そうな眼差しで俺を見てくる優季さん。

「客観的に見させてもらえばそうなる、かな?」

夜の学校では色々ありましたからなー。

「はぁ、貴明さんがそう言うならそうかもしれませんね」

そう言ってニコッと笑う。というかここは笑い所ではないと思う。

 

「それにしても郁乃。お前優季さんに随分なついてるんだな」

「え、そ、そう?」

目をパチクリさせる。

「そうだ。知り合ったのって結構最近だろ?それなのにあんな軽口が言えるなんて懐いている証拠じゃないのか?」

「まぁ、そうなんですか?それはうれしいですね」

そう言って郁乃に笑かける。

「え、えーっと……」

「あ、郁乃が照れてるよ〜」

「お、お姉ちゃん、うるさい!」

赤くなった郁乃をからかう愛佳。そしてそれを見つめる優季さん。うん、いい関係だ。

俺が思うに、二人は包容力があるという点も似ていると思う。だから郁乃もすぐ優季さんに慣れる事ができたんじゃないのかな?

「ちょっとお兄ちゃん!なにニヤニヤ見てるのよ!」

こちらの視線に気づき、抗議の声を上げる。

「ん〜、気にするな」

いや〜、普段生意気な郁乃のあわててる姿は何だかかわいく感じるな。暫く目が離せないよ、俺。

「気になるわよ!こっちみるなー!」

うがーっと手を上げて叫ぶ。ますます面白い。

とまぁ俺達は待ってる間こんな感じで騒いでいた。

 

それから十数分後……。

「待たせたな」

お盆を持ったるーこが俺たちのテーブルにやってきた。……るーすぺしゃるってやっぱりるーこの入れた紅茶の事だったか。いや、予測済みだったけどさ。

「え、る−こさん?!」

るーこのウェイトレス姿を見てビックリな愛佳。

「おお、うーんちょ。久しぶりだ」

「あ、はいお久しぶりです」

「お姉ちゃん知り合いなの?」

「うん。クラスメイトだもん。……ってあれ?最近るーこさんには会っていなかった気が……」

るーこの能力でるーこが休んでも周りは気にしないようになってるらしいからな。愛佳が混乱するのも仕方ない。

「細かい事は気にするな。せっかく来たんだからるーの紅茶をしっかり味わっていけ」

「え、え、もしかして、『るーすぺしゃる』のるーってるーこさんのるー?!」

今頃気づいたか。だからお前は天然なのだ。

「ん?なんだ、うーもいたのか」

まだ混乱している愛佳をよそに俺に気づいたるーこが話しかけてきた。

「ああ、ちょっと喉が渇いてね」

「わかった。少し待ってろ」

そういうと3人の前にクッキーの入った皿と空のティーカップを並べた。

「では、注いでやろう」

そういうとるーこは紅茶に空気を含ませるためあの『水芸』を行った。

「「「おおっ!」」」

ティーカップをじっと見つめる3人。

「……よし。ではな、ゆっくりしていけ」

そう言うと今度は俺の方に体を向ける。

「うー、注文を言え」

「じゃあ俺もるーすぺしゃると……」

うーん、後は何がいいかな?

「どうした、うー?」

あ、そうだあれがいい

「るーすぺしゃるサンドイッチで」

「……それはるーの作ったサンドイッチが食いたいということか?」

実はそんなものはメニューには無い。前るーこが俺に食べさせてくれたサンドイッチを勝手にそう呼んでみただけである。でも、るーこには通じたようだけどな。

「まぁ、そうなるな」

そう言うとるーこは嬉しそうに笑った。

「仕方が無い。用意してやる。待っていろ」

「ああ、待ってるよ」

るーこの後ろ姿を見送る俺。そんな時視線を感じ、振り向いた。

「……。(じー)」

郁乃がジト目で俺の事を見ていた。

「な、なんだよ、言いたい事でもあるのか?」

「別にー。ただお兄ちゃんって女たらしだなーっと再確認しただけよ」

「なっ!!」

女の子が苦手な俺がたらしだと?

「心外って顔してるわね。でも自分の胸に手を当ててよく考えてみることね。ね、お姉ちゃんもそう思うでしょ?」

同意を求めようと姉の方を向く郁乃。

「ここの紅茶おいしいね〜」

「ええ、本当。とってもまろやかですね」

しかし二人は紅茶に夢中な様子でこちらの話しなどアウトオブ眼中のようだ。

「ちょっと、お姉ちゃん。聞いてる?」

「ふぇ?何が?そんな事より郁乃も飲んでみなよ。とっても美味しいよ?ここの紅茶」

「駄目だ。食い気に意識が行き過ぎてる」

愛佳は食いしん坊だからな。当たり前と言えば当たり前の反応である。

「郁乃さん」

溜息を吐いていた郁乃に声を掛ける優季さん。

「貴明さんは女の子にだらしが無いのではなくて、ちょっと優しいだけなんですよ」

「え〜、そうかな?」

なんだか納得がいかないご様子。

「はい。それは郁乃さんも御存知ではないんでしょうか?」

「うっ……」

言葉に詰る。心なしか顔も少し赤い。

「困っている人に優しくできる。それが貴明さんの魅力だと私は思うんですよ」

こちらを真っ直ぐ見ながら言う。

「ゆ、優季さん、そんな事真顔で言われるとこっちとしてはちょっと照れるんだけど……」

「そうですか?貴明さんって恥ずかしがりやさんなんですね。新発見です」

微笑む優季さん。というかあんな事を言われれば照れて当然だ。

「なぁ郁乃……」

「なによ……」

「やっぱりこの二人似てるよな?」

「天然な所が特にね」

「「はぁー」」

扱い難い事この上ない二人である。

 

少したったらるーこが料理を運んで来てくれたので俺はそれを食べてる最中だ。

「優季さん、次は何処に行く?」

「私まだここの地理に疎いので愛佳さんにお任せします」

「じゃあねェ、お勧めは……」

ん?この二人他にも何処かに行くつもりなのか?

「じゃあ、たかあきくんが食べ終わったら出発ってことでいいよね?」

「ええ、そうしましょう」

話しが纏まったらしく頷き合う二人。なにやら俺の名前が出てきた気がするのだが。とりあえず説明を求めるため郁乃のほうに目を向ける。

「あの二人これから紅茶めぐりするんだって。転校してきたばかりの優季さんにおいしい紅茶の店を紹介するんだってお姉ちゃん張り切っちゃってさ」

「たかあきくんも、もちろん一緒にいくよね?」

俺の顔を覗きこんでくる愛佳。

「まぁ、それは楽しくなりますね」

ぱちんと胸の前で手を合わせる優季さん。

「え、でも……」

俺がどうしようかと躊躇っていると、

「お兄ちゃん」

郁乃が俺の肩を掴んだ。

「一蓮托生」

「は?」

わけがわからない。

「まぁ。紅茶を飲みに行くだけなんだろ?それぐらいなら付き合うよ」

「ホント?よ〜し、今日は十件はまわるよ〜!」

「十件?!」

「ふふ、楽しみです」

どうやら二人は本気のようだ。、でも十件って……。

「一人だけ逃げるなんて許されないからね」

ちっ、郁乃に釘をさされちまった。

 

俺が食べ終わり、会計をすませ、今は店の前。

「じゃあ、紅茶巡りに出発〜」

「おー!」

ノリノリな二人である。

「覚悟しといた方がいいわよ。お姉ちゃんの紅茶好きは半端じゃないから」

俺に向かってボソっと言う郁乃。

「ふぅ」

とりあえず今日の晩飯はいらないだろうという事がすぐに予測できてしまった俺なのであった。

 

追伸

結局、計十数杯の紅茶を飲んだ。もう当分紅茶は見たくない。でも愛佳や優季さんは全然平気なようだった。あいつらいったいどういう胃袋してるんだ?もしや宇宙か?あながち否定できないと思った(貴明の日記より)

 

 

 

あとがき

はい、似た者同士をお送りしました。

今回何も言う事はありません。すっげー駄作。随分時間がかかったのに情けない。リクエスト頂いたのに……。

なので今回は載せるのをやめようかなーっとか思いましたがこれを載せないとさらに間が空いてしまう。それも拙いと思ったので載せてみました。

ということで繋ぎ程度に考えてください。もう次のネタはあるので近日中に公開。今回よりは面白くしたいです(希望

では今回はこの辺で。いい訳になってしまいましたね。反省。これに懲りずにまた次の作品も見て欲しいです。ではでは。

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