タヌキとキツネのお友達

 

 

 

今俺は商店街にいる。今日のミッションは食材調達。過去の経験より知り合いに遭遇するとミッションの達成率が著しく下がるので迅速な行動が要求される。カップ麺はもう嫌だ。

「……。(きょろきょろ)」

右、左を確認。よし、知ってる奴はいない。では早速目的地へ……。

「あ、センパイじゃないっスかー!」

俺が歩き出そうとした時、背後から声が聞こえてきた。そのため思わず足が止まる。

(……どうする?たぶん声を掛けられたのは俺だ。知ってる声だったしな。でもここで振り向いたら確実に買い物にはいけなくなるし、かといって無視するっていうのも……)

「センパイ、立ち止まっちゃってどうしたんスか?」

気が付くと目の前にタヌキっ子の顔があった。

「おおう!!」

思わずその場から飛びのく俺。

「……女の子の顔見て驚くなんて、センパイ失礼ッスね」

「よっちの顔だし仕方がないと思う。あ、先輩こんにちは」

「こ、こんにちは」

憮然とした顔のタヌキっ子と無表情なキツネっ子の二人組がいた。

「ちょっとちゃる!それってどういう意味っしょ!」

「ふぅ、言葉も理解できなくなったのか?これだからタヌキは」

やれやれという感じで首を振る。

「ムッキー!キツネのくせにー!もしあんたの顔だったら今頃センパイ、悶死してるわよ!」

キツネっ子を指差しながらそう叫ぶ。つーか悶死ってなによ?

「も、悶死!タヌキめよくも言ってはならない事を」

ショックを受けたのかよろよろと後退する。

「ふん!そっちが先に仕掛けてきたんでしょ!」

あ、なんか雲行きが怪しくなってきた。

「やはり決着を着けるべきか……」

「望むところ!」

そういってファイティングポーズをとる二人。よし、チャンスだ。

「なんか急がしそうだから俺もういくよ」

今のうちに得意の三十六計で!

「あ〜!ちょっと待ってくださいよセンパイ!なんで行っちゃうんすか!……って前もこんなことやりませんでした?」

「繰り返しはギャグの基本だぞ、よっち。仕方がない」

この話しはギャグですよ?

「は、話しを戻すけど、俺は用事があるからのんびりしてられないんだ。悪い」

「えー、センパイと遊びたかったのに」

「……(こくん)」

おまえらの場合、先輩『』だろ!

「センパァイ、用事ってなんスかー?」

尚も食い下がってくるタヌキっ子。

「俺の生死が関わってくる重要なことだ」

嘘は言ってない。

「せ、生死って。なんかすごく大事な事なんですか?」

「ああ、その通りだ。俺にとって非常に大事なことだ。だから悪いけど今日は付き合えない」

極力真剣な顔で言う俺。

「はぁ〜ならしょうがないッスね」

ガックリと肩を落とす。よし、上手くいった。内心でガッツポーズをとる。

「ちゃる、今日は女二人寂しく遊ぼうか?」

「……。」

「ちゃる?」

「キミはバカか?」

「な!」

いきなりのバカ発言に驚くタヌキっ子。しかしそれに構わずキツネっ子は喋り続ける。

「よく考えてみろよっち。商店街で生死が関わってくる重要な用事があると先輩は言ってる。そこから少し考えればわかる。」

「商店街、生死、用事のキーワードから連想されるもの?」

「そう。そして私達は前回それを邪魔している」

ギクッ!!

「私達が前回邪魔した事って確か……。あ、わかった!」

「そう」

「「買い物(だ)!!」」

「あってますよね、先輩?」

こちらを見てくるキツネっ子。目は自身満々だ。

「うっ!……せ、正解だ」

「え〜!センパイ酷いッスよー!何事かと思ったじゃないッスか!」

「落ち着けよっち。先輩は嘘はついてない。」

「でもー買い物ぐらい……って、あ!」

「よっち?」

「そうだ!今度はあたし等が先輩の買い物に付き合えば良いんだ!」

ぽんっと手を叩いて言う。

「フム、なるほど。よっちにしてはいい考えだ」

「してはってなによ!してはって。でも、先輩OKッスよね?」

「いや、ほら、でもね?」

冗談じゃない。ついて来られたら落ち着いて買い物なんてできやしない。

「先輩、私結構買い物は慣れているのでお役に立てると思います」

「ね、センパイ。前はあたし達に付き合ってくれたからそのお礼ってことで」

二人がこちらの顔をじーっと見て俺の答えを待っている。

「ううっ」

断り難い。しかしここで提案を受け入れるとオチが見えてしまう。

「センパイ!」

「先輩……。」

どうしたものかと俺が判断に困っていると、

「たかあき〜!」

ぽややーんとした声が後ろから聞こえてきた。

「?」

誰だと思って声のした方を向くとぽすっという軽い衝撃が俺を襲った

「えへへ〜たかあき〜」

目線を下げると腰の辺りに珊瑚ちゃんが抱きついていた。

「さ、珊瑚ちゃん?」

「うん、そうやで」

にぱーっと笑いながらこちらを見上げる。

「な、なんで抱きついてんの?」

「ん?商店街を歩いとったらたかあき見つけてな〜、それでや」

答えになってませんが?

「ちょ、センパイ!そのうらやま……じゃなかった、破廉恥なことしてる子は誰ッスか!」

「よっち、ちらりと本音が出てる」

「え、誰って言われても……学校の後輩?」

「ただの後輩がそんなに気安く抱きついてもいいんスか!しかも『たかあき』って名前で呼んでるし!」

ムキーっと言いながらバンバンと地団駄を踏むタヌキっ子。

「なぁ、たかあき、あの子ら誰?」

俺に抱きつきつつも顔だけを二人組みに向ける珊瑚ちゃん。

「えっと、俺のいた中学の後輩で……あ、そうそうこのみの友達だよ」

「このみちゃんの?ふーん」

そういうと俺から離れ、とてとてと二人組みに向かって歩いた。

「な、なんスか!」

「……。」

タヌキっ子は少し身構えるが、キツネっ子はじーっと珊瑚ちゃんの方を見ている。

「うち、姫百合珊瑚。うちもこのみちゃんの友達やねん。だから仲良くしよ?」

笑ながらそう言う。友達の友達は友達だという発想なのだろう。

「い、いきなりなにを……」

「わかった。仲良くしよう」

キツネっ子は珊瑚ちゃんの手を取ってそう言った。

「私は山田ミチル。ちゃると呼んでくれ」

珊瑚ちゃんはいきなり手を握られてキョトンとしていたが、すぐにいつものようににぱーっと笑う。

「うん、わかった〜。うちの事も珊瑚でええよ?」

「珊瑚ちゃんか。うん、了解だ」

それにしても以外だ。キツネっ子がこんなに積極的だなんて。

「ああ、ちゃるの悪い病気がでたかー」

頭をポリポリかきながら呆れた顔をするタヌキっ子

「悪い病気?」

「そうッス。こいつ可愛いものに弱いんスよ。それでちゃる、このみの事もかなり気に入ってるし、たぶんその子も直球ど真ん中ストライクだったんじゃないッスか」

「へ〜」

「ホント、本人は可愛げなんて全くないっていうのに、顔に似合わないというかなんと言うか」

「よっち、失礼だ」

だけど珊瑚ちゃんの手は離さない。

「なあなあ、そっちの子は〜」

「へ、あたし?」

「うん、うちと友達になるのはいや〜?」

首を傾げ上目遣いにタヌキっ子をみつめる。

「!!」

なにやら衝撃を受けてるようだ。そして珊瑚ちゃんの方へ向かい、キツネっ子を突き飛ばし、手を握る。

「……何をするよっち」

憮然とした顔で文句を言うが、タヌキっ子には聞こえない。

「ううん、全然そんなことないよ?あたしは吉岡ちえ。よっちって呼んでね」

「よっちか〜。うん、了解や〜」

またまたにぱっと笑う珊瑚ちゃん。

「く〜〜〜〜〜」

なんかこの人悶えてますが。

「センパイ!この子マジでかわいい!お持ち帰りしてもイイッスか!」

「駄目に決まってるだろ」

「そうだ、私が持ち帰るんだからな」

今度はキツネっ子がタヌキっ子を突き飛ばし、手を握る。

「なにするのよバカキツネ!」

「ふん、身の程をしれ」

「なんだとー!」

睨み合う二人。手を離された珊瑚ちゃんが俺の方にやってきた。

「たかあき〜、あの二人、おもろいな〜」

「はっはっは」

俺は笑うしかありませんでした。

 

しばらくキツネとタヌキの化かし合いを見学していたが、ふと俺の頭に疑問が浮かんだ。

「ねぇ、珊瑚ちゃん。今日は一人で来たの?」

「ううん、ちゃうよ。瑠璃ちゃんといっちゃんもいっしょやねん」

「で、二人は?」

「……さぁ?」

さては何も言わずにきたな?

 

「さんちゃーん!」

「珊瑚さまー!」

俺が二人を探しに行こうかどうか考えていると、都合よく、声が聞こえてきた。

「あ、ふたりとも〜、こっちやで〜」

その声を追うようにして二人がこちらにやってきた。

「もう、さんちゃん!勝手に何処か行ったらあかんっていつも言うとるやないの!」

「そうですよ、珊瑚さま。すごく心配したんですからね」

「ごめんな〜瑠璃ちゃん、いっちゃん。たかあき見つけたら我慢できなかった〜」

「ああ、なんや、たかあきもおったんか」

「こんにちは、たかあきさん」

なかなか酷い事を言う。でも、それだけ珊瑚ちゃんの事が心配だったんだろう。

「それよりな〜、うち、新しい友達ができたんよ〜。お〜い、ちゃる〜、よっち〜」

珊瑚ちゃんが呼ぶと、二人は口げんかをやめ、こちらにすっ飛んできた。……現金なやつらだ。

「何?どうしたの?」

「どうした?」

「あんな〜、うちの妹の瑠璃ちゃんと、友達のいっちゃんや!二人とも仲良くしたって〜」

瑠璃ちゃんとイルファさんの方を見てそう言った。

「ちょ、ちょっとさんちゃん!どういうこと?」

「珊瑚様、これはいったい?」

戸惑い気味の二人に対して、キツネっ子とタヌキっ子は興味深々だ。

「うわー、双子だー」

「こっちはメイドロボ?すごい、本物の人間みたいだ」

二人の事をじーっと見つめている。 そしてそんな四人を珊瑚ちゃんがニコニコしながら見守っている。

「た、たかあき?説明して」

「たかあきさん、これはいったい?」

珊瑚ちゃんは当てにならないと踏んだのか、こちらを向く二人。

「この二人はこのみの友達でね、今日は偶然俺と一緒だったんだ。そしてさっき珊瑚ちゃんがこちらにやってきた時、このみ繋がりということで仲良くなったんだ」

「このみちゃんの友達?」

その言葉にタヌキっ子とキツネっ子が素早く反応する。

「うん!あたしのことはよっちって呼んで!」

「私の事はちゃるで構わない」

二人は瑠璃ちゃんの手を片方ずつ取る。

「「よろしく!」」

「う、うんよろしく」

戸惑いながらも瑠璃ちゃんは頷いた。

「あと、そっちのメイドロボさんも」

タヌキっ子がイルファさんの方を向く。

「え、私ともお友達になって下さるのですか?」

「もちのろんっしょ!ね、ちゃる」

「珊瑚ちゃんの友達なら私の友達だ」

「ありがとうございます。私はHMX17aイルファと申します。イルファとお呼び下さい」

「うん、わかったっス!」

「了解」

そうして瑠璃ちゃんの時と同じように握手をする。3人ともとてもいい笑顔だ。

「よかったな〜、瑠璃ちゃん、いっちゃん」

「ええ、とてもうれしいです」

「う、うん」

イルファさんは満面の笑み、瑠璃ちゃんは照れてるのか下を向いているが、満更でもない様子。

「あ、そうそう3人は今日暇?」

「ええ、お買い物に来ただけですから」

「じゃあ、うちらと一緒じゃん!」

ちょっと待て、それはどういうことだ?まだ決まってなかったはずなんだけど。

「じゃあ、買い物が終わった後、何処か遊びに行こう!折角友達になったことだしね!」

「うん、よっち、いい考えだ」

「そうですね、いい考えです。ね、瑠璃様?」

「う、うんそうやね」

なんかドンドン話しが進んでる。

「じゃあ、善は急げって言うし買い物へ出発っしょ!」

そうして俺達はスーパーへ向かっていった。

 

「え〜!イルファさんって珊瑚ちゃんが生みの親なんスかー!!」

「はい、そうですよ」

「超ビックリっス!」

イルファさんに出生を聞いてビックリのタヌキっ子。

「……(じー)」

「な、なんや?」

「……(じー)」

「ううっ!何なんやいったい!」

「……(かわいい)」

瑠璃ちゃんをじーっと見つめてご満悦なキツネっ子。瑠璃ちゃんは少し混乱の様子。

こんな感じだが、初めて会ったとは思えない程仲良くなってるみんな。それを見て珊瑚ちゃんはニコニコしっぱなしだ。

「随分うれしそうだね、珊瑚ちゃん」

「うん、たかあきのおかげや〜」

「俺のおかげ?」

「うん。うち、たかあきと仲ようなってから友達いっぱい増えたやろ?今、とっても幸せいっぱいなんや〜。みんなたかあきのおかげ〜」

そんな、買いかぶりもいい所だ。

「ありがとな〜、たかあき」

「いや、俺は別に何もしてんないよ」

実際機会は作ってあげたかもしれないけど、後は珊瑚ちゃん自身が頑張った結果だ。

「あ、そうやたかあき、ちょっとしゃがんでくれへん?」

「え、こ、こう?」

言われた通り珊瑚ちゃんの前にしゃがむ俺。

「感謝の印〜」

そう言って珊瑚ちゃんは自分の唇を俺の唇に押し当てた、って俺今キスされてる?!

「!!」

珊瑚ちゃんのいい匂いと唇の柔らかさで俺の頭がいっぱいになる。

「えへへ〜」

「……。」

珊瑚ちゃんが離れても、俺はその場にぼーっと突っ立てしまう。駄目だ、頭がボーっする。

「センパーイ!何してるッスかー!おいてっちゃいますよー!」

「はっ!!」

タヌキっ子の声によって我に帰ることができた。……さっきの誰にも見られてないよな?

「たかあき、はよ行こ?」

そういうと、珊瑚ちゃんは俺の手を掴んで、走り出した。

「ちょ、ちょっと珊瑚ちゃん!」

「みんな〜待って〜な」

そうして俺達二人はみんなの元へ駆けて行くのであった。

 

          おわり

 

 

あとがき

無理をした。もう一回言います。無理をしました。ぶっちゃけ6人を動かすのはかなりきつかったです。

ということで「タヌキとキツネのお友達」をお送りしました。何か間違えがあっても無理したんだなーで済ませて下さい。あと、今回のタイトルも意味無しです。深く考えないように。

ここで一つ言いたいことが。実は私、ちゃるとよっちの区別がつきません。あ、もちろん顔の区別はできてますよ。名前がどっちがどっちだったかわからないんです。なぜかって?それはあの二人をタヌキとキツネで認識してるからです!(おい

そのため地の文では一度もちゃる、よっちとは出ていないはずです。一応会話で使うんで調べますがすぐ忘れます。そっこーです。だから会話の度に一々調べてます。めんどくさい。名前なんてただの飾りです!偉い人にはそれがわからないんですよ!ってな感じです。

でもよっちとちゃるはかなり好きなコンビです。また今後も出したいなーとか密かに思っています。

あと、今回のコンセプトは「珊瑚ちゃんに友達を」ってな感じです。姫百合姉妹ルートをプレイした方ならこの意味解ってくださると信じてます。ええ、信じてます。(しつこいって

最後になりましたが紫苑さん、どうですか?満足できましたか?またリクエストくださいね。誰と誰を出して欲しいというのはこちらもネタが出し易くて良いです。待ってます。

ではでは今回はこの辺で。楽しく読めた方はまた次回も、つまらなかったと思ってる方はこれに懲りずにまた来て頂けると嬉しいです。koutoでした。

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