笹本花梨の溜息
「ふぅ……」
「どうしたんだ、会長?窓際で溜息なんかついて。正直似合ってないぞ」
「もう!失礼だねタカちゃん……ってなんでいるの?今日は部活お休みだよって言ったよね?」
「ああ、聞いてる」
「じゃあ何で……あ、わかった!花梨ちゃんが恋しくなってフラフラと来ちゃったんだ!もう、しょうがないなー、タカちゃんはー」
そう言って俺の脇腹をちょんちょんと突付く会長。
「違うわ!!ちょっと会長に渡すものがあってきただけだよ」
「え、あたしに?」
俺の言葉が以外だったのか、自らを指さし目を丸くする。
「そうだよ、ちょっと待っててくれ」
そう断って俺は鞄の中から例の物を取り出しにかかる。
えーっと、何処入れたっけな。今日は荷物が多いから鞄の中がごちゃごちゃして探し難いぜ。
「まさか、ラブレター?!いやー、花梨困っちゃうなー」
何やら勘違いして体をくねらせている会長。ぶっちゃけかなり不気味だ。
……ってそんな事気にしてる場合じゃないんだ。えっと確か……。
「お、あったあった」
手に当たった感触から当たりと判断し、それを鞄から抜き取る。
よし、潰れてないな。
「ほら、会長。やるよ」
そう言って手に持った物を会長に放り投げる。
「おっと!もう、タカちゃんったら普通ラブレターをラッピングする?普通は封筒でしょー?」
「だからそんなんじゃねーっつーの!!」
小さな包装された箱を片手に呆れた表情をつくる会長に向かって突っ込みを入れる。
「じゃあ、何?ビックリ箱?にしては小さいわよねー」
箱を手の中で躍らせ、観察する。
というか今時ビックリ箱なんて売ってるのか?少なくとも俺は見たことないんだが。
「まぁ、とりあえず開けて見てくれよ」
「えー、タカちゃんなんか仕込んでない?」
「仕込むか!!」
全く、会長じゃあるまいしそんな事はしない。
「わかったわかった。開ければいいのね」
まったくしょうがないなーっと箱を包んでいるリボンを解く会長。
暫くして箱を開いた会長の顔が驚きの色に染まる。
「え、これって……」
開け終えて中から取り出したのは髪留め用の赤いリボン。
会長はそれをじっと見つめて、
「貢物?」
「違う!!」
何でこいつはまともに考えられないんだろう?
「プレゼントだプレゼント」
「えーーーー!!!!」
「……なんでそんなに驚くんだよ?」
「だって、タカちゃんがプレゼントなんて気のきいた事できるなんて思っても見なかったんだもん」
「をい!!」
こいつは俺の事をどう思っているのか小一時間程問い詰めたいものである。
「でも、なんで急にプレゼントなんか?」
「俺だって人の誕生日ぐらいはプレゼントするに決まってんだろ?」
「え?」
その言葉で会長の動きがピシリと止まる。
うん?もしかして違ったのか?
「いや、そうじゃないけど言ったけ、あたし。自分の誕生日?」
「聞いた覚えはないな」
「じゃあなんで?」
「前に生徒手帳届けた事があっただろ?そんとき知ったんだよ」
放課後、部室の扉の前にポツンと置かれた生徒手帳。
俺はそれを拾い持ち主に届けるという善業をした事がある。
「あー、そういえばそんな事もあったねー」
「うむ、わかってくれたようで何よりだ」
どうせ会長の事だ。変に照れてみんなに祝ってくれーなんていえなかったんだろうな。
だから俺ぐらいこんなことしてやってもいいだろう。
「……もう、そういうのを余計なお世話って言うんだよ」
と会長は言うが、その顔にはかすかな笑みが浮かんでいるのを見逃す俺ではない。
ま、喜んでくれてなによりだ。
そう口元を僅かに緩ませリボンを眺める会長を見て俺は思うのだった。
おわり
後書き
続ける気はなかったんだけど、会長の誕生日なので特別仕様という事でヨロ。
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