やー諸君おはよう。

え、うちは夜だって?ははは、細かい事はどうでもいいじゃないか。とりあえず僕のいるところでは朝だからそれに似合う挨拶をしたまでさ。

それにしても朝はいいねー。特に晴れた日の朝は。なんというか、こう清清しい気分になるじゃないか。これから一日頑張ろうという気力が湧いてくるものからね。きっと太陽が地球に住む僕達にエネルギーを分けてくれているのだよ。オメーに元気を分けてやるー、って感じで。……ちょっと違うか。

ん?若い人のなかには何のネタか解らない人もいるのかな?気になったら20代後半から30代前半の人に聞いて見てくれたまえ。好きな人はかなり多いはずだよ。あ、その時の注意事項として決しておじさん、おばさんとは呼ばないように。それぐらいの年齢の人はその言葉にかなり敏感だからね。ここだけの話、僕もついついお年頃の女の人を前にしてその言葉を口にしてしまった事があるんだ。いやー、あれは危なかった。人はあれほどの殺気を出せるものだとあの時初めて理解したよ。うん、みんなも気をつけるように。

おっと、話がかなりそれてしまった。朝についての事だったよね。うん朝についてだ。

雲ひとつ無い青空、澄んだ空気、小鳥のさえずり。僕の中ではこれだけの条件が揃えば最高の朝だと思うんだよ。そして今日はその条件を全て満たしてくれている。とても良い日だ。

……そう、とても良い日なんだ。でもなぜだか僕の心は暗雲で満たされている。理由が解るかい?

「ううん?なんでー?」

それはね……

「てめーが、朝から人の布団に潜り込んでいやがるからだ、このド阿呆!!!」

 

 

 

あべれーじ

 

 

 

「わ!!」

鈴を転がしたような声を上げ、侵入者は俺の叫び声に目を丸くする。

「もう、急に大声出さないでよ。兄さん」

頬をプーッと膨らませ、体全身で『怒っているんだぞ』と表現しようとしているが、なまじ可愛らしいという表現が当てはまるらしい顔をしているので、如何せん迫力が無い。

つーか、皆無だ。

「ふん、こんなのどこが可愛いんだか。世間っていうのはよくわからんね」

「むー、これでも学園内では一、二を争う美少女だと評判なんだからね!」

そこまでを結構な勢いでまくし立てた後、急に照れ初め、

「……こ、告白とかも結構されるし」

何を恥ずかしがっているのかしらんが、モジモジするのは止めれ。キモイ。

「キモク無い!!」

そう言って俺に顔を近づけてくるこいつは、一応俺の妹に当たる存在である。名前は綺羅。

ちなみに俺の名は晃。自分で言うのもなんだが目立った特長もない通行人Aのような平凡な男だ。

いや、俺の事などどうでも良い。今はこの愚昧についてだったな。

先程一応とつけたのは、あれだ。ぶっちゃけ血が繋がっていないからだ。

よく漫画とかである、義妹という奴である。

そのため、顔は俺と全然似ていない。それどころか数段に整っている、らしい。

ぱっちりと開いた大きな目に、高い鼻。ぷっくりとした唇に加え、今はやりの小顔。俺の友人が言うところの『美少女ゲームのヒロイン並み』な顔をこいつはもっている、らしい。

しかもストレートの黒髪ロングが今時の若者には無い清楚感を与えており、これで勉強も運動も高レベルな成績を収めてしかもスタイル抜群ともあれば学内で人気がでない筈が無い、らしい。

なんで所々らしいという表現がついているのかと言うと、正直な話俺にはそういうのがよくわからないからだ。

なんせ家も近所でガキの頃からよく遊んで『やって』いたため、いまいちピンとこない。同じ年で尚且つ俺のほうが遅く生まれたにも関わらずこいつ、いつも「おにいちゃんおにいちゃん」って俺の後ろにくっ付いてきたからな。

そりゃ昔に比べたら体型や顔立ちもかなり変わった。だが、俺にとっては変わっただけなのだ。こいつが俺が昔から知っているこいつだという事実は変わらない。よって昔のはなたれ泣き虫面が俺の海馬から消去される事もない。つまり、妹のように接してきた時間が長すぎるし現在では本当に妹な為そういった対象としては捉えられないのだ。親父が再婚するまの間も家族のように接してたからな。今更態度を変えろという方が無理なのである。

まァ、良く言う近すぎる関係という奴。ここで漫画やゲームならちょっとしたきっかけで恋にでも発展していくんだろうが、そんな事は現実ではありえんと俺は核心している。二次元は、二次元、三次元は三次元。しっかりと区別をつける事が俺のポリシーだからな。よって、今後一切こいつとはそういった関係にならないし、なりたくもないし、ならせもしない。俺がこいつにしてやることといったら、これの結婚式の時親族として幼少の頃の恥ずかしい話をネタとして会場にいるやつらとお婿さんに聞かせてやるぐらいだろう。血の繋がりは無いが世間一般の兄と妹、それが俺達の関係である。

というわけでそこ!義妹とムフフな関係に……等というエロゲーみたいな展開にはならいからそう思っておくように。

「兄さん、聞いてるの!!」

「あーん?」

少し飛ばしていた意識を戻してみれば目の前には奴の顔のドアップ。

……しかしわっかんねーんだよなー

こうしてマジマジと見ても世間の意見はよく解らず、ついつい目を細めてしまう。

目か?鼻か?口か?確かに整っているとは思う。だがそれだけで俺には魅力的には見えんのだがなー。これが美意識の違いという奴か?偉い人にはわかりませんよってやつか?

俺全然偉くないけどな。

「うーん……」

俺が自分の感性について悩んでいると、

「……ちょ、ちょっとそんなに真剣に見つめないでよ」

ポッと顔を赤らめて目を逸らしやがった。

「……なんでそこで赤くなるんだよ」

「だ、だって……恥ずかしいじゃない」

自分から顔を近づけておいて、それはないだろう。

全く、我が妹ながらよくわから……

「って、あー!」

「え、な、何?」

いきなり俺に指差されて戸惑うが、そんな事は気にせずに俺は言葉を続ける。

「お前、なんで俺のワイシャツ着てるんだよ!!しかもそれ今日着ていこうとしたやつじゃないか!!」

うちの学校は私服禁止なので普通に学ランとワイシャツである。

当然上着とズボンは毎日洗うはずがなくハンガーにかけてある状態なのだが、シャツだけは義母が毎日洗濯してくれて、夜のうちに準備しておいてくれている。だから今このバカがきているのは俺の今日の分というわけ。

ワイシャツぐらいと思うかもしれないが、良く考えて見て欲しい。ここであきらめるとして義母さんに何て言う?妹にシャツ取られたから新しいのくれってか?それはいくらなんでも高校生としては恥ずかしすぎるだろう?よって俺はこれから全力でこいつから取り返すことをここに誓おう。

「つーことで返せ」

「うん、いいよー。兄さんの学校用ワイシャツ貰っちゃったら流石に悪いからね」

「じゃあ何で着てるんだよ?」

愉快犯か?このバカは頭は良いくせにどこかずれてるからその可能性も否定はできない。バカと天才は紙一重とも言うしな。

「……暖めておいてあげようと思って」

頬に手を当てキャッと恥ずかしがるこの馬鹿。

……予想の斜め45度を行きやがったよこいつ。

お前はあれか、信長の草履を懐で温めた秀吉の真似がしたいのか?

「……人肌の服なんて気持ちが悪いだけなんだがな」

「むー、それがかわいい、かわいい、かわいー妹にかけることばなのかなー?」

顎に指先を当てこちらを覗きこむように見てくる愚妹。

重ねて言うが、俺はゲームや漫画のようなご都合主義展開が現実で起こる事など認めていない。よってこいつが望んでいる少女漫画のようなやり取り、(「ははは、こいつー」みたいなことことだな)は決して言わない!言えない!!言えるかー!!!

……ああ、いい加減こんな事考えるのもウザくなってきた。

「いいからとっとと脱げ。俺が着替えられないだろう?」

「もう、兄さんたら朝から大胆なんだから」

いやんいやんと首を激しく振るこの脳たりん。

こんなのでも俺より成績がいいというんだから世の中間違っている。絶対に間違っている。

「そのワイシャツ脱ぐだけだろうが」

「だってこの下何も着てないんだもん」

事も何気にそう言ってワイシャツの胸元を引っ張って平均よりもかなり大きめの胸の谷間を自分で覗き込む。

「……」

「ん?どうしたの兄さん?」

「……それじゃあ何か、お前は今裸にワイシャツ一枚と?それで兄貴の布団に潜り込んできたと?」

心の中で湧き上がる黒い怒りを必死で押さえ込むこちらなのだが、相手のほうは

「いえーす。だっつライトー。どう、萌える?」

黒い目を楽しそうに細めて親指を突き上げてきやがった。

ブチン

そのあまりにも阿呆なやり取りに俺の中の何かが音を立てて切れる。

唯でさえこいつは漫画の中から出てきたような完璧超人なのだ。それでも俺の中ではギリギリだというのに、なんだその態度は?お前はどっかのエロゲーの萌えキャラか?そんな存在など断じて俺は認めない!!

それ以前に勝手に人の布団に潜り込んでくるんじゃねぇー!

それと勝手に人の服をきるんじゃねー!!

生まれた怒りが次々と抑えから抜け出し、遂には外へと漏れ出していく。

「萌えるわけあるかーー!!!!!!」

その怒りに任せて伸ばした右手で阿呆の頭をガシッとホールド。そしてそのまま力を入れ潰すように指先に力を込める。

「い、いたたたた!!に、兄さん!!割れる、割れちゃうよ!!」

これが俺の特技のうちの一つ。アイアンクロー。使用用途は見ての通り愚昧のお仕置きようである。

「そんな頭割れてしまえ!!だいたいいつも言っているだろうが!!俺はそんなギャルゲーみたいな展開が大嫌いだと!!!」

「そ、それでも、に、兄さんも男だから、わ、私にムラムラくるかなーって……って、い、いたいいたい!!力込めないでよ!!」

と俺の手を掴んでバタバタともがくが、そんな事では俺の必殺技は外れない。

そして外さない。ここで甘くしたらこいつの奇行はエスカレートするだけである。このバカは何故だか俺を二次元のような世界に引き込もうとする傾向があるからな。妹にムラムラくるだと?そんなのは3次元じゃ危ない奴じゃねえか!!寝言は寝て言えってんだこんちくしょー!!!

ということで戒めの意味を込めて更に力を強くする。

「だーれが妹に欲情するかこのバカチンがー!!」

「み、みにゃーーーーーー!!!」

響き渡るは愚昧の奇声。

こうして、『今日も』俺の朝は騒がしく始まるのだった。

 

 

続くのか……?

 

 

 

あとがき

希望が『もし』あれば続けるかもね……

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