過去にて(3)
校門まで歩いていくと先輩と同じ顔の人が立っていた。
彼女は俺達の姿を確認するとこちらに手を振りながら駆け寄ってきて、藤田の目の前で止まった。
「は〜い、姉さんに浩之」
「あれ、綾香。なんでここに」
どうやらこのそっくりさんは先輩の妹らしい。それにしてもよく似てる。入れ替わってもわからないぐらいに
「今日さ、セバスチャンが向かえにこれないのよねー。でも姉さん一人で帰すのも不安だし、迎えに来たわけよ」
頬に手を当てた姿勢で喋る妹さん。そんな彼女の袖を先輩が引っ張る。
「……」
「『私一人でも帰れます』?ダメよ姉さん。外は危険がいっぱいなのよ?姉さん世間知らずだから知らない人について行いく可能性もあるし……」
先輩の肩を揺すりながら熱弁を振るう。
「そうだぞ、先輩?そういうのはちゃんと電車に乗れるようになってから言うセリフだ」
……先輩電車に乗れないんだ。さすがお嬢様。まるで漫画の世界みてー。
「あら、そういえばそっちの人は?浩之の友達?」
話についていけず、ぼーっと突っ立てた俺に妹さんが目を向ける。ふむ、これは自己紹介をするべきか。第一印象は大事だから、インパクトのあるのをやろう。
「ああ、こいつは……」
「十五年以上先からやってきた未来人です」
俺の事を話そうとする藤田の言葉を遮る俺。うん、これでインパクトはバッチリだ。
「……」
しばらくじーっとこちらを見た後、藤田のに顔を向ける。
「浩之、この人電波系?」
「いや……」
「本当の事ですが、何か?」
「……」
またしばらく無言になったあとおもむろに藤田の肩を叩く。
「……友達は選んだほうがいいわよ?」
すごくあいまいな表情を浮かべる妹さん。
「あ、ひでー。全く信じてないな?」
「あたりまえでしょ!未来から来ました、って言われてあっさり信じられるほど人間出来ちゃいないわ!!」
こちらに向かって怒鳴りつける。
「えー、でも本当の事だしー」
「……OK今から病院行きましょ。来栖川が経営している良い精神科があるから」
「ふー、現実には目を向けないといかんよ?」
やれやれといった感じに首をふりながら言ってやった。
「その言葉、そっくりそのまま送り返してやるわ!!」
ビシッとこちらに指を突きつけてくる。
「……お前ら仲いいなー」
「……(コクコク)」
結局俺と妹さんの口論は十分ぐらい続いたのだった。
「……」
「へ?じゃあ、あいつの言ってた事は本当なの?」
話が進まないので先輩に事情を説明してもらう事にした。
「ああ、先輩が河野の事、手違いで召喚しちゃったんだ」
「あっちゃー姉さんがらみかー。なら納得」
顔に手を当て妹さんがつぶやく。
「だから言ったじゃないか。俺は未来人だって」
「だって、常識的に考えて信じられないじゃない……」
「ほほー。先輩みたいなお姉さんをもっていても信じられなかったと?」
「まぁ、人間なんてそんなもんよ」
こいつ開き直りやがった。
「さ、そんな事より自己紹介をしましょう。私は来栖川綾香。綾香でいいわ。姉さんの妹で学年はあなたや浩之と同じ。学校は寺女に通ってるわ。趣味は格闘技ね」
「綾香はエクストリームって格闘技にのチャンピオンなんだ。メチャクチャつえーぜ?」
その言葉に妹―綾香が少し胸を張った。
「じゃあ、次は俺か。俺はさっきも言ったとおり、未来人だ。呼び方は河野でも貴明でも好きによんでくれ」
「おっけー、じゃあ貴明ってことで。ところで貴明、あなたこれからどうするの?行く当てとかは?」
「ああ、それなら綾香たちの家に住んでいいって先輩が言ってくれたんだ」
その言葉に目をパチクリさせる綾香。
「うちに?」
「そう、世話になるよ」
「うん、気にしないで。私は全然OK……ってあ!!」
そう声を上げたあと神妙そうな顔になってしまう。
「どうしたんだ綾香?河野を泊めるのは拙いのか?」
「……うん、ちょっと拙いかもしれない」
……なんだか急に先行きが不安になってくるのだった。
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