オカルト研究会にて(4)
「うん、これで準備はOKね」
絨毯の上にある机を全てどけた後、会長が満足そうに頷いた。机の数はほんの数個しかなかったため、撤去作業はすぐに終了した。
「で、いよいよこれを退かすってわけか。……本当にあるのかね?」
会長の予想では絨毯の下の床には魔方陣が書かれているらしいが、どうも俺は信じきれない。
「退かしてみればわかるよ。さ、タカちゃん私はこっち持つから向こう持ちに行って」
そう言うと会長はしゃがみこみ、絨毯の端を掴む。あまり大きくないので二人で退かす事は十分可能だ。
「はいはい」
俺は指示どおり反対側に行き、同じように絨毯の端を掴む。
「なんかドキドキするねー、タカちゃん」
嬉しそうに顔をほころばせる会長。早く退かしたくてうずうずしているのが、手にとるようにわかる。
「では、会長。合図を」
「うん!せーの!!」
それを合図に俺達は絨毯を持ち上げる。
「どう、タカちゃん?魔方陣あった?」
「落ち着けって、今持ち上げてるんだから下が見えるはずないだろう?」
「あ、それもそうか」
あはははーっと照れ笑いをする。よっぽど期待してるんだな。
「これさ、結構重いからさっさと退けちまおうぜ」
「うん、了解」
俺達はえっちらおっちら絨毯を運んでいった。
そして絨毯の下には……。
「……無いね」
「ああ、無いな」
何も無かった。魔方陣はおろか落書きすら見当たらない
「そんな〜、あれだけ期待させておいてこれは酷いよ〜」
ぺタっと座りこんで情け無い声を上げる会長。
「会長が自分で勝手に期待しただけだろ?」
「う〜でも〜」
「あきらめろって。世の中そんなもんさ。さ、片付けてとっとと帰ろうぜ」
俺はそう会長に言うと退かしたままの絨毯の端を掴んだ
「ほら、会長も早く」
「……はぁー、仕方ないか」
会長もこちらにやってきて絨毯の端を掴んだ。
「「せーの」」
今度は二人で声を掛け持ち上げる。進行方向は会長が前に進み、俺が後ろに進む、だ。
「ああ、でもやっぱりショック〜。あんなに噂があったんだから今度こそ本当かもって、期待してたのに〜」
絨毯を運ぶ手を止めて会長が愚痴る。
「ま、所詮噂は噂でしか無いってことだろ?また次のを探せばいいじゃないか。もしかしたらその辺に転がってるかもしれないぞ?」
結構身近なところに不思議な事って落ちているものだ。経験者が語るんだからな。あながち間違ってもいないだろう。
「……うん、そうだね。また次の探せばいいだけだもんね。ありがとうタカちゃん。慰めてくれて」
そういうと会長は微笑した。いつもニヤニヤ笑いしか見ていなかったため、俺はその笑顔に少し、ほんの少しだけ見入ってしまった。
「……!べ、別に慰めたわけじゃ……」
見入ってしまった恥ずかしさから思わず顔をそむけてしまう。
「あ、タカちゃん、もしかして照れてる?」
「て、照れてなんかないって!」
反論するときに見た会長の顔にはいつもの笑みが張り付いていた。
「ほんとかな〜」
「本当だって!ほら、さっさと片付けて帰るぞ!」
置くスペースがないため結構遠くの方に絨毯を置いてしまった。そのため元の場所の半分ぐらいしか来ていない。
「はいはい、そう言うことにしといてあげるわ」
そう言うと会長は再び動きだし、俺もそれに合わせて歩みを再開した。
それから無駄話もなく、作業も順調にすすんだ。ちなみに俺の今の立ち居地は元絨毯中心あたり。もうすぐ終わりだ。
(本当に何もないよなー、実は俺も少しは期待してたんだけど)
俺がそんな事を考えていると、
「……」
誰かの声が聞こえた気がした。思わず足を止めてしまう俺。
「うん?どったの、タカちゃん?」
会長が首を傾げながら尋ねてくる。
「……ねぇ、会長、今なんか言った?」
「え、なにも言って無いけど。」
「だよねー」
じゃあ、やっぱり空耳か。
そう区切りをつけて歩き出そうとすると……
「……ん」
「!やっぱり空耳じゃない!」
今、確かに声が聞こえた。なんだろう?なんかブツブツいってるように聞こえたんだけど……。
「え、え!タカちゃん何か聞こえるの?」
「……会長は聞こえないの?」
「う、うん。別に何も」
俺の言動に戸惑いながらも会長はコクンと頷いた。
「と、いったいどうなってる……」
「……ぞむ」
俺が考えているとまた声が聞こえた。会長に聞こえないって事は俺の頭の中に直接声が入って来てるって事か?しかもさっきよりも声が大きくなってやがる。
「た、タカちゃん?」
声を震わせながら会長が俺を呼ぶ。
「どうした?」
「し、下。下見てみなよ……」
下?下には別に何も……。
「!!」
そんな、馬鹿な。下には何も無かったはずだ。無かったはずなのに……なぜ今魔方陣が光を発しながらうかんでるんだ?!
「……の名の下に」
「ちっ!!」
声が更に大きくなる。あまりの大きさに俺は思わず絨毯から手を放して耳を塞ぎ、その場にしゃがみこんでしまう。
「ちょ、ちょっと、タカちゃん、大丈夫!」
会長も手を放し、俺の方に駆け寄ってこようとする。しかし……
「なによこれ!どうなってんの?!」
なんと魔方陣の光によって進路を阻まれ、中心にいる俺には近づけない。
「は、はは……。良かったじゃないか、会長。これ、絶対ミステリーだぜ……?」
耳鳴りも始まりだして意識も飛びそうになるがそれでも俺は会長を心配させないように苦笑しながら言った。
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!ねぇ、タカちゃん!大丈夫?!」
見えない壁をどんどんと叩く。心なしか目も潤んでるように見える。
「大丈夫……」
そういったものの、さっきからだんだん力も抜けはじめている。それでも俺は何とか会長を心配させないようにと足を踏ん張ろうとする。だが、その時……
「……汝を召喚する」
脳を貫くような声が聞こえたかと思うと共に魔方陣の光がまぶしいくらいに強まる。
「タカちゃーーーーーん!!」
会長の叫び声を聞きながら俺はその光の中心で意識が闇へと落ちていくのを感じるのだった……。
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