「むー」

「どうしました、浩之さん?難しい顔なさって」

「ああ、最近更新の多いこの話なのだが」

「なのだが?」

「明らかに読んでいる人は少ないと思うんだよ」

「それは仕方の無い事ですね。この作品どちらかというと『裏』に該当しますから」

「まぁ、表だった更新情報は出してないからなー」

「出せないのでしょう。今はまだ許容範囲内ですが、これからドンドン凄い展開になっていくらしいですよ」

「……どちらの意味かはあえて聞かないでおこう」

「それが賢明かと」

「にしても『裏』って事は『アレ』な展開もあったりするのかね」

「さぁ、如何なものでしょう?しかし18歳以上しか購入出来ないものが今度発売される予定なので完全に無いとは言い切れませんね」

「うわー、書けるのかよあの作者」

「内容を精密に描写しなければ何とかなるんじゃないでしょうか。そういうのも見かけたりしますし」

「ああ、ああいう風にか?」

「ふふふ、貴明くん、怯えちゃって可愛い(はーと)」

「はーと、じゃねぇ!!っていうか前回から続いてたのかよ、この展開!!」

「大丈夫よ、痛くしないから、ね?」

「そういう問題じゃねー!!(全力ダッシュ)」

「私から逃げられると思ってるの?(瞬時に貴明の前に出現)」

バタン!!(←押し倒す音

「ふふ、もう逃げられないね。(ジュルリ)じゃあ、いただきまーす!!」

「いやー、助けてー!!!」

暗転……

「……いいのか、あれ?」

「ここでの展開は本編とは何ら関係がないから大丈夫ですよ、浩之さん」

「そういう問題でもない気がするけどな」

「では、浩之さんも納得されたところで、そろそろ締めに入りましょう。ダラダラ長くするのも見苦しいですから」

「(納得なんてしてないんだけど)まぁ、いいや。それじゃあ、前座はここまでだ。後は本編を楽しんでくれ」

「お付き合い有難うございました」

「いやー、やめてー!!」

「嫌も嫌よも好きのうちってね、ふふふ」

 

 

 

過去にて(11)

 

 

 

「……だんだん前座の方が長くなってる気がするな」

「……同感だ」

「どうしたのですか、お二人とも苦いものを嘗めたような顔をなさって?」

首を傾げながら不思議そうにこちらを眺めるセリオ。

「いや、なんでもない。」

藤田が安心させるために首を振り、その後、目線をこちらに固定してきた。

「それよりも河野。前回の説明で元に戻るまではかなり時間がかかりそうっていうのは理解したよな?」

「前回とか言うなよ……まぁ、俺の認識の甘さはよくわかったよ」

「そう落ち込むなって、誰でも予想外の事には予測なんて立てられないもんさ」

ポンポンと慰めるかのように俺の肩を藤田の手が叩く。

別に落ち込んでなんていないんだけどな。

ただ俺はるーこや優季さんとの付き合いから超常現象には人よりも耐性があるつもりだったけど、やっぱりまだまだだなーっと確認しただけの事である。

落ち込むというより、自分の甘さに対する自己嫌悪の方が強い。

「で、理解してもらった上で聞くがお前はこれからどうするつもりだ?」

「先輩が俺を元に戻すための間って事だろ。うーん、どうするべ」

部屋でごろごろしているのもなんとなく悪いような気がするし、かといってバイトをするにしても俺この時代では生まれてさえいないしなー。

「まぁ、戸籍なんかは大丈夫だろう。来栖川の力を使えば人一人なんてどうとでもなると思うぜ?」

「天下の来栖川だもんな。じゃあ、バイトするってのが妥当か」

ということはフリーター生活か。

しかし俺バイトなんかした事ないからなー、上手くできるか非常に心配だ。

「その心配はありません」

先程まで黙ってこちらの会話を聞いていたセリオの口が開いた。

「なんだ、来栖川がいいバイトを紹介してやるのか?先輩の魔術の助手とか、綾香の組み手の相手とか」

「……それはいいバイトなのか?」

特に、『綾香との組み手』って辺りに物凄い悪寒を感じるのだが。

「あー……悪ぃ、命の危険を伴う物なんて全然よくないな」

「おい!!」

思わずピシッ突っ込みを入れてしまう俺。

命が危ないってどういうことさ?

「……続けてもよろしいでしょうか?」

「お、おお悪い悪い。じゃんじゃん進めちゃってくれ」

セリオに冷たい眼差しを向けられ、慌てて前を見る藤田。

「オホン、来栖川、いや綾香様は貴明さんに学校に通うようにと仰っております」

「「学校?!」」

「貴明さんも学生なのですから学校に通うのが一番正しい、と」

「ああ、確かにフリーターよりもそっちの方がこいつにはいいかもな。でも編入とかはどうす……って聞くまでもなかったか」

「ええ、その辺りは現在急ピッチで『工作』中です」

「こ、工作って……」

思わず乾いた笑いを浮かべてしまった。

「来週にはもう通えるようになるでしょう」

「場所は?」

「不安を少なくするという事で浩之さんと同じ学校、同じクラスに編入させるという方針です」

「じゃあ来週からはこいつとクラスメートって事か。……かったるい」

「おい!!」

二度目の突っ込み。

それに対し、藤田は可笑しそうに笑い、

「冗談だよ、冗談。俺も無関係ってわけじゃないからな。ちゃんと面倒みてやるって」

バンバンと俺の背中を叩いた。

「……激しく不安だ」

「浩之さんはお人よしで有名ですから、その辺りの心配は不要だと思います」

まぁ、なんだかんだ言って今日初めてあった俺に長いこと付き合ってくれたもんな。

案外面倒見もいいのかもしれない。

「ああ、まかせとけって」

そう言って藤田は朗らかに笑うのだった。

 

「おっと、もうこんな時間か。そろそろ帰らないとな」

会話がひと段落ついたところで時計を見る藤田。

あれから色々と話あっているうちにすっかり時間も過ぎてしまった。

「長いことつき合わせて悪かったな」

「気にするなよ。さっきもいったけど俺は関係者なんだ。これくらいで何か感じる必要なんてないんだよ」

そう言って席を立ち、持ってきていた鞄を引っつかむ。

「うし、帰るか。明日はこの辺案内してやるから楽しみにしておけよ」

「おう、了解」

手を上げて俺は応える。

「じゃーなー」

それを確認し、藤田は家の外へと出て行った。

 

「で、藤田は帰ったわけだがセリオはいいのか?」

台所で洗い物をしてくれている後姿にそう尋ねてみる。

「いいのか、って何がでしょう?」

こちらを向き、首を捻るセリオ。

「何って、帰らなくっていいのかって聞いてるんだけど」

「ああ」

ポンと手を打ち、今気付いたって感じの声を上げる。

「そう言えば言ってませんでしたね」

「何をさ?」

「私、綾香様に貴明さんのお世話をするよう言いつけられているのです。だから帰る必要はないのですよ」

ああ、そりゃ納得だ。これから俺の世話をしてくれるんだったら帰る必要なんて……

「って、世話!?」

「ええ、そうです。あ、一時的ではございませんよ?貴明さんが元の時間軸に帰るまでずっとです」

……それはつまり、一緒に住むという事でせうか?

「はい、よろしくお願いしますね、御主人様」

そう言ってセリオは少し、ほんの少しだけ微笑みのようなものを浮かべるのだった。

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