「さて、今回も本題前の前座いってみようか……ってどうしたんだ河野?そんなにやつれて?」
「……いや、なんでもないさ。決して前回の事が尾を引いているわけじゃないぞ。ああ、そうだとも。ふふ、ふふふふふ」
「……お前、本当に大丈夫か?」
「なんとか最後の一線は踏みとどまったさ(どこか諦めたような笑い」
「(何をやられたんだ、こいつ?)」
「とりあえず、発言には細心の注意を払わないといけないって事がよくわかった」
「そ、そうか。これからは気をつけろよ?」
「ああ、またあの鬼に『何か』されたんじゃこっちの身がもたな……」
「あ、馬鹿」
「ほほ〜、誰が鬼ですって〜(何処からともなく表れ壮絶に微笑む」
「もちろんはる……ってなんでいるんですか?!」
「ふふふ、細かい事はあっちでゆっくりと、ね?」
「(うわー、可愛らしく言ってるけどバックに般若が映ってるぜ)」
「(首根っこを捕まれ引き摺られる)え、ちょっと、またこのオチかよ!!」
「それじゃあ、失礼しました〜」
ズルズルと貴明を手に去っていく謎の人。
「……うわー、凄い笑顔で去っていきやがった」
「ちなみに、彼女が誰なのかはまだ秘密ということらしいです」
「バレバレのバレまくりだけどな。……ってセリオ何時の間に?」
「もう締めの時間ですから。それではみなさま前座はここまで。後は本編をお楽しみ下さい。」
「じゃーなー」
「た、助けてーーーーー」
過去にて(10)
「ところで河野」
皿を空にした藤田が満足げな顔でこちらに目を向ける。
……にしても食う早いな。俺はまだ終わってないぞ?
「お前さ、これからどうするんだ?」
「どうするって、何が?」
「ああ、もう察しの悪い奴だな」
何故だろう、それをお前に言われるのは酷く不愉快なのだが。
そんな俺のムッとした表情には気付かないで藤田は言葉を続ける。
「これからの生活についてだよ。まさかお前、このまますぐに帰れるとは思わないだろうな?」
「ああ、そう言う事か」
納得がいき、俺は頷く。
これからの事、ねぇ。そういえば何にも考えてないな。
……どうしよう。
「素人見だが、先輩がお前を元の時代に返すまで結構時間がかかると思うんだよな」
「ほう、その心は?」
「お前が完璧なイレギュラーだからさ」
フォークでこちらを指しながら真剣な表情を浮かべる藤田。
「元々先輩は悪魔を召喚しようとしたんだ。それがなんらかの突発的事態が生じてお前がこの時代に召喚されてしまった。未来からな」
「ああ、そういえばそんな事言ってたな」
「で、ここで問題となってくるのは2つ」
フォークを置き、俺に向かって指を二本上げてみせる
「2つ?」
「そう。一つ目は突発的原因が何かを調べる事」
うん、それはわかる。
間違った解を正すのに、原因を調べるのは当然のことだ。
それにしっかりと追究しておかないと、戻すにしてもまた似たような失敗が起こるかもしれないからな。流石にこれ以上の時間移動は勘弁して欲しいところである。
「そして二つ目はお前を存在した時代に返す方法を調べる事」
「え、ちょっと待てよ。大体こういうのって呼んだら返す方法も知ってるはずじゃないのか?」
某ゲーム風に言うなら送還術という奴である。
「ああ、その辺の幽霊とかならな。でも、これが生きてる人間となると話は別だ。適当に送り返して、元の時代から何百年後とか平行世界に飛んじゃったとかしたら困るだろ?」
「う、それはきついな」
「だから返す方法を念入りに調べる必要があると思うんだよ。第一先輩、人間なんて呼び出した事ねーし」
……。
やべぇ、なんだか頭が痛くなってきた。
「……マジ?」
「こんな事で嘘つくかっつーの」
疲れたように肺に入っている空気を外に押し出す藤田。
「いっただろ?完全なイレギュラーだって。たぶん先輩も今相当頭抱えてるんじゃないのか」
「……何気に俺、かなりピンチ?」
「ああ。客観的に見てもやばいぐらいピンチだな」
……。
……。
暫し降りる沈黙。
お互いになにも言えなくなり、重苦しい雰囲気が台所を支配していった。
「大丈夫ですよ」
「セリオ?」
この静まった空間に石を投じた人物に目をやる。
そこには目と頬の力が僅かに抜けたセリオの表情があった。
「芹香さまは任せろとおっしゃったのでしょう?」
「ああ、うん」
別れ際に小さい声で「必ず元の時代に帰してあげますから」と先輩は俺にそう言ってくれた。
「なら大丈夫です。『あの』芹香さまと来栖川が動くのですから。この世で出来ない事の方が少ないですよ?」
そう言ってこちらを見つめるセリオ。
その言葉には気休めなど一切入っていなく、あるのは絶対な『自信』だけだった。
「はっ!確かにその通りだな。全く俺としたことが……」
頭をかきながら、伏せていた顔を上げる。
「藤田……」
「ああ、すまん、河野。さっきの事は忘れてくれ。あの先輩が『必ず』って言ったんだ。きっとどんな事をしてでもお前を元の時代に帰してくれるさ。先輩はそういう人だ」
「そう、なのか?」
「ああ、そうだ。本当、その事は俺がよく知っていたはずなんだけどなー。俺もまだまだ修行が足らんと言う事か」
「……そっか」
藤田の言葉から感じられるのは信頼。先輩の事も、藤田の事もあったばかりでまだよくわからないけど、ここまで言えるんだ。こちらが期待しても大外れというわけではないだろう。
それに、この現状俺にはどうする事も出来ないしな。
「……了解。俺も信じるよ」
明かりが見えた、なんだかそんな感じがした俺なのだった。
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