「なぁ、河野さん」

「なんですか、藤田さん」

「そろそろ『あの人』ださないと拙くね?一応ヒロインなんだし」

「え、この話のヒロインってセリオじゃないの?!」

「……(手で顔を押さえて悲痛な表情)」

「……(どこからか登場)ふふふ、面白い事いうね。ちょっとあっちでお話しましょうよ」

「え、ちょっと、あ、あなたは!!」

「はいはい向こうに行ったら聞いてあげるからね(ズルズル)」

「た、助けて〜〜〜!!!」

貴明、謎の人に連れて行かれて退場。

「……グッバイ、フレンド。セリオ、締めだ」

「はい。みなさま、このお話本編とは全く関係ないのであしからず」

「じゃあ、本題を楽しんでくれ。お相手は、藤田浩之と」

「セリオがお送りしました」

「……みぎゃ〜〜〜!!!」

 

 

 

過去にて()

 

 

 

「はっ!!なんだか酷い目にあった気がする」

「おいおい、河野どうした?電波か?」

「違う!!……まぁ、いいや。ところでこちらは完了したんだけど、そっちはどうよ?」

手に持っている窓拭きに使っていた新聞紙をゴミ箱に捨てながら、座って掃除をしている藤田に声をかける。

「おう、こっちも今終わった所だぜ」

そう言うとすくっと立ち上がってこちらに親指を突き出してきた。

「と、言う事は」

「ミッションコンプリートって事だな」

「……」

「……」

お互いに、掃除した箇所を見合う。

うん、綺麗になった。これなら合格点だろう。

そう思ったのは奴も同じだったらしく、こちらを見て満足げに笑った。

「藤田」

「河野」

「「いえーい!」」

思わずハイタッチを交わす俺達。

あれだけ汚かったのをセリオの助けがあったとはいえ、これだけ綺麗にしたんだ。

今は自分達の頑張りを褒め称えよう。

「よーし、掃除も終わった事だし早速頂に行くか」

「ああ、セリオの作ってくれたホットケーキか」

「おう。もう向こうの準備も終わっているだろうし、冷めないうちにちゃっちゃといこうぜ」

「了解だ」

そして綺麗になった部屋を後にし、俺達はいい匂いのする台所へと向かっていった。

 

「あ、お二人とも」

台所ではセリオが焼きたてのホットケーキを紙皿に載せている最中だった。

「掃除はもう終わりましたか?」

「バッチリだ。な、河野」

「ああ、あれならここで生活していけるよ」

「そうですか。私の方も完了しています。どうぞ座ってください」

そうセリオに促され、椅子に腰をかける。

この来栖川のアパート、外見はボロイ癖に部屋の中は割りとしっかりしていたりする。

俺の部屋と同じぐらいのものが一つに、それとほぼ同面積で飯を食う場所も兼用できる台所が一つ。そしてトイレ、風呂完備である。

昔の物価は知らないが、それでもこれだけのものを『秘密基地』感覚で所有してしまっている来栖川はアホみたいな金持ちなんだと今更ながら実感してしまう。

「ま、それが来栖川クオリティって奴だな。気にしてもしょうがないと思うぜ?」

「なんだよそれ?ま、気にしてもしょうがないっていう意見には賛成だけど」

なんで馬鹿話をしているうちにどうやらセリオの準備も終わったようだ。

「お待ちどうさまです」

そう言って紙皿にのったアツアツのホットケーキを俺達の前に置く。

このツヤ、この匂い、食べなくても美味いとわかるのものが目の前に出現して、今まで空腹を忘れていた俺の胃袋が急に引き締まる。

……そういやドタバタしすぎて何にも喰ってなかったからな。腹も減るはずだ。

「どうぞ」

「うっし、んじゃ食うかー」

「いただきますっと」

パク、もぐもぐもぐ……

おお、美味い美味い。

セリオの焼き加減もさることながら、今の俺は空腹の絶頂にいるので非常にうまく感じてしまう。これなら何枚だっていけそうだ。

「時間が無かったため市販製品で申し訳ないのですが……」

「いやいや、そんな事気にすることないって。な、藤田」

「ふぁんふぁよ」

口目いっぱいにものを詰め込んだ藤田が俺の呼びかけに皿から顔を上げる。

「……」

「ごくん……なんだ河野その目は。言いたいことがあるならハッキリと言え」

「いや、本当に腹ペコキャラなんだなーって」

「うっさいわ!!こちとら一人暮らしなんだから、栄養は摂取できるときにしておかないと生死に関わるんだよ!!」

何もんな力強く言わんでも……。

まぁ、その気持ちも解らんでもないけど。

「浩之さん。まだ幾ばかり材料が残っていますので焼く事は出来ますが、お持ち帰りになりますか?」

「お、マジで?じゃあ頼むわ」

「はい、承りました」

そう言うとセリオはコンロに向かいホットケーキのタネを焼き始める。

「いやー、これで夕飯の心配はなくなったな」

嬉しそうにそう言った後、またガツガツと食べ始まる。

……ってまだ喰うのかよ、お前。

半ば呆れる俺であった。

 

 

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